長引く自粛の中、このインターネット辺境地であるボブログにさえ「コロナだけど美容院行きたい」「コロナ 美容院 行っていい」という心の叫びでGoogle検索して来てくれる人が結構います。
2021年の緊急事態宣言では、飲食業に集中した対策が主眼のため、美容業には特に制限が出されていません。20時以降の外出自粛要請に対応し、時短営業を行っているところがほとんどです。会社にも行かなきゃいけない、髪をきれいにしておきたい、だけどサロンへいくのが心配……アフターコロナの美容室には、そんな「揺り戻し需要」も予想されます。
美容院行っていいよー!!来てー!!としっかりお伝えできるように、美容業界専門誌の立場から、感染経路と美容室で実際に取られている対策をまとめました。
美容師さんには、リスクをしっかり把握することで対策とお客さまへの説明に役立てていただき、美容師さん以外の閲覧者の方(お客さま)には、美容室で気を付けるべきところを知っていただきつつ、「美容室行っても大丈夫」と思っていただければ幸いです!
★12月27日追記★
リスクを網羅した、最新の対策の流れを動画でご紹介しています→こちら
コロナ対策でヘアカラー施術を受けた当日にシャンプーしていい?という疑問に答えました→こちら
illustration:倫理を忘れたグルメ野郎
新型コロナウイルスの感染経路
以下の情報は厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)、国立医療科学院(https://h-crisis.niph.go.jp/)のウェブサイトをもとにまとめています。それ以外の資料を参考にした情報についてはソースを付記しました。
飛沫感染=感染者と近くで話したりすると危ない
飛沫感染:感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、口や鼻などから直接吸い込んで感染すること
飛沫は5分間の会話で1回の咳と同量が飛ぶ。
無風の場合、立った状態の成人の口から出た飛沫が地面に落ちるまでの飛距離は2~5m程度( 保育所における感染症対策ガイドラインより)
接触感染=感染者が触ったところを触った手で自分を触ると危ない
接触感染:感染者がくしゃみを押さえるなどして自分の飛沫に触れた手で周りの物に触れた場合、触れた場所にウイルスがつく。そこを触った人の手にウイルスが移る。その手で口や鼻などの粘膜を触って感染すること
潜伏期間や無症状感染者からの感染は「可能性がある」
世界保健機関(WHO)のQ&Aによれば、現時点の潜伏期間は1-12.5日(多くは5-6日)とされており、また、他の(新型コロナウイルス以外の)コロナウイルスの情報などから、感染者は14日間の健康状態の観察が推奨されている。
無症状病原体保持者からの感染を示唆する報告もあるが、実際に無症状感染者からの感染を確認した例はない。通常、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合、症状が最も強く表れる時期に、他者へウイルスをうつす可能性も最も高くなると言われている。
ウイルスはどうやって取り除けるのか
ウイルスはものの表面にくっついてしばらく残ってしまう。
新型コロナウイルスの環境中における生存期間 (湿度40%の環境下)
プラスチック・・・72時間 (1/1,000 に減少)
ステンレス・・・ 48時間 (1/1,000 に減少)
銅・・・ 4時間 (1/200~1/300 に減少)
段ボール・・・ 24時間 (1/1,000 に減少)
(北里大学による資料より、ただし当方では原典の論文は未確認。生存期間については諸説あり、これ以上の生存が確認されたという報告も散見される)
衣服や肌については有機物である段ボールと同基準という意見が見られるが、確認は取れていない。
脂質の膜を持つため、薬品で除菌可能
エンベロープとは、脂質と糖タンパク質から構成される膜。エンベロープ (脂質) は エタノール (アルコール) などの有機溶媒に溶ける。新型コロナウイルスはこの膜を持っており、膜を壊せば死滅させることができる。
Kampfら (2020. J Hosp Infect. In press) は、
ヒトおよび動物のコロナウイルスに対する消毒薬の研究(22例)を総合的に踏まえて、
62~71% エタノール、0.5% 過酸化水素、0.1% 次亜塩素酸ナトリウム
が新型コロナウイルスを消毒できる(1分以内に不活化)と報告。(北里大学による資料より)
適切な塩素濃度で消毒液を作れば除菌できることが各自治体から公表されている。
さらに、住居用洗剤やハンドソープで新型コロナウイルスを不活性化できる研究結果を北里大学が発表しており、これによると、
- エタノールに関しては、50%以上の濃度であれば、(ウイルスに対する)接触時間 1 分間で十分なウイルス不活性化が可能
- 拭き取り洗浄を想定した1分の接触時間で、「かんたんマイペット」「クイックルワイパーのウエットシート」「マジックリン」「ビオレのハンドソープ」「リセッシュ除菌EX」
- つけ置きを想定した10分間の接触時間で、「アタック」「ワイドハイター」「マジックリン」
などのウイルス不活性効果が証明されている。
塩素系で作る消毒液などもそうですが、噴霧は危険な薬品が多いのでよく調べた上で行ってください!
手洗い、シャンプーなどで洗い流せば大丈夫!
ウイルスは表面に付着しているだけなので、流水で物理的にウイルスを流すだけでも効果はある。石鹸はコロナウイルスの膜を壊せるのでもちろん有効。
マスクの効果は限定的
ウイルスがマスクの布地の目より小さいためウイルスの侵入を防ぐことはできず、効果を実証するような研究は今のところ出ていない。
しかし、飛沫そのものの飛散は抑えられ(飛沫もマスクの布地の目より小さい場合が多いが、ウイルスよりは大きいので布地引っかかる割合が高い)、また自分の鼻や口に不用意にさわることが減るという点で効果はあると言える。
また、粘膜が乾燥しているとウイルスに弱くなるため、湿度を保つ効果がマスクの役割だという主張もある。
参考:JX通信社、WIRED、ESSE ONLINE、新型インフルエンザ専門会議発表資料
サロンで考えられる感染源と、実際の美容室での対策まとめ
以上の情報を踏まえ、これまでにボブログで取材したサロンで行われている、新型コロナウイルスコロナ感染対策をまとめます。考えられる感染源には、十分な対策が取られていることがわかります。
ここにまとめるのは取材時に明文化されていたもののみです。現場では多くの美容師さんが、ここに書いたような対策は既に気を使っておられる場合が多いと思います。
また、4000人以上のサロン経営者を対象にしたアンケートでも、多くのサロンが十分な対策を取っている様子がわかります。こちらにまとまっていますのでご参照ください。
元になっている記事と登場サロンの一覧(サロン名前順)
以下、文末の( )内に、実際に行われているサロンの名前と場所を示しています。
リスク①感染者の在店
感染したお客さまの来店を防ぐため、キャンセルを依頼
2週間以内の渡航歴や渡航歴のある人との接触の履歴がある場合(JENO/東京、LIMシンガポール)
体調に不安がある場合(JENO/東京、LIMシンガポール)
自宅での検温、37°以上の場合(JENO/東京、ASCH/愛知県名古屋市)
来店時の検温(LIMシンガポール)
スタッフが感染していないことの確認、スタッフの感染防止
1週間の自宅待機で未感染を確認(JENO/東京)
毎日の検温(JENO/東京、LIM/東京・大阪、ASCH/愛知県名古屋市)
他店舗への移動やスタッフ交流を禁止(JENO/東京)
ミーティングや合同練習自粛(ASCH/愛知県名古屋市)
リスク②感染者が在店し、飛沫を飛散させる
マスク着用、換気で防御
スタッフ・お客様どちらも施術中マスク着用(marni hair/韓国、JENO/東京)
マスクの替えを提供(JENO/東京)
店内の換気(JENO/東京)
リスク③同じ空間に多数の人が滞在する、接触する人数が増える
席間隔を明ける、同時在店数を減らす
出勤スタッフの人数制限(同時に在店する人数が大幅に減る)(JENO/東京)
席の間隔を開ける、1席話して着席してもらう(JENO/東京、LIM/東京・大阪、ASCH/愛知県名古屋市、LIMシンガポール(シンガポール政府からの要請))
事前ご予約のみの受付(待つための在店を防ぐ)(LIM/東京・大阪、LIMシンガポール)
お子様・お連れ様の同伴は控えてもらう(LIM/東京・大阪)
在店は1時間以内(LIMシンガポール(シンガポール政府からの要請))
お客さまと関わる人数を減らす
マンツーマンの施術を行う(LIM/東京・大阪)
アシスタントは清掃や電話応対のみ(LIMシンガポール)
リスク③感染していなくても、ウイルスを外から持ち込む可能性がある
出入り時の消毒
お客さまもスタッフも、店に出入りするたびに全身消毒(marni hair/韓国、JENO/東京、LIM/東京・大阪)
お客さまごとに、スタッフの手洗い、うがい、手指消毒(JENO/東京)
身につけてきた衣類・鞄すべて除菌(LIM/東京・大阪)
入店時の手指消毒徹底を依頼(ASCH/愛知県名古屋市)
リスク④ウイルスがついた場所を触ったり、手についたウイルスをほかの場所につけてしまう
お客・スタッフに対しての消毒励行
受付、各セット面、お手洗いに消毒液を設置(marni hair/韓国、JENO/東京、LIMシンガポール(シンガポール政府からの要請))
店に出入りするたびに消毒(marni hair/韓国)
お客さまごとに、スタッフの手洗い、うがい、手指消毒(JENO/東京、ASCH/愛知県名古屋市)
先にシャンプーをしてウイルスを洗い流す(ASCH/愛知県名古屋市)
施設・道具に対しての消毒
お客さまごとに座席の消毒(marni hair/韓国、LIMシンガポール)
椅子やドアといった手の触れる場所の消毒を徹底(JENO/東京、LIM/東京・大阪、ASCH/愛知県名古屋市)
エレベーターなど店舗外の施設も消毒(LIM/東京・大阪)
タオル・クロスの消毒を徹底(JENO/東京)
施術道具(シザー、コーム、ブラシ等)の徹底消毒(JENO/東京、LIM/東京・大阪)
ウイルスがついた手で自分の粘膜に触ったり、さらにウイルスをほかの場所につけてしまうのを防ぐ
マスク着用(marni hair/韓国、JENO/東京)
お客さま在店中の布手袋着用(JENO/東京)
手袋着用でのカット(LIMシンガポール)
共有して様々な人の手が触れるものは中止
会計時に手が触れ合わないように、手袋やキャッシュトレーの使用(JENO/東京)
ロッカーの鍵の受け渡しなどもすべてトレイで行う(LIM/東京・大阪)
共有で手が触れる可能性のあるディスプレイや雑誌提供は廃止(LIM/東京・大阪)
フェイスブラシを使い捨てコットンに変更(ASCH/愛知県名古屋市)
サロンに行きたいけど不安な人へ:「美容室だから」という感染リスクはない。十分対策を取って、ヘアを楽しんでー!
これまでのまとめで分かる通り、「サロンだから」という感染リスクはありません。どれも他のどんな施設にも共通するリスクですし、美容師さんたちは国家試験時に公衆衛生を学んでいるので、サロンが特別危険ということはなさそうです。
韓国では感染者の感染経路が公表されますが、美容室での感染はなかったそうです。韓国のサロンのTOMOさんは、「余計な場所を触らない、ウイルスを持ち運ばないように徹底的に消毒する意識がみんなにあったからではないか」と分析していました。
行きたいサロンの対策状況を確認し、密を避けて移動すれば、特別リスクが大きいことではありません。美容師さん皆さん待ってるので、久しぶりに髪切りましょー!
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