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【熊本水害支援】 希望のキモノに、もう一つの涙ながれる

このブログでたびたび紹介してきた熊本水害支援の続報です。9月16日にNPO法人ウッディチキン(伊藤豊代表)のサロン経営者ら15名が被災地を訪問。現地を視察して今後の支援方法を検討すると共に、被災者と交流しました。その結果、心あたたまるエピソードが届きました。

被災から3カ月、復興の道けわしく

7月3日~4日の豪雨で球磨川が氾濫し、熊本県人吉市、球磨村、芦北町、八代市などで死者65名、行方不明2名を数える大惨事となった熊本豪雨水害。現地は骨組みだけになった家々が忌まわしい記憶を残し、今も避難所には数百名の被災者が暮らしています。

水が引いた後に泥をかき出し、壁紙を剥がして乾かし、ようやく再建工事に取り掛かった物件がチラホラ出始めました。

新型コロナウイルス感染症の影響で、県外からのボランティア活動が制限されているので復旧が遅れているからです。同じく、建築従事者の人数も不足しており、工事の開始を待っている物件が大半です。

この地域で、理美容室は71軒が被災しました(ウッディチキン調べ)。かつての店内にはほど遠い状態ながら暫定的に営業を再開したサロンが多く、中にはプレハブの仮店舗で営業しているサロンもあります。

その現状を受け「積徳」や「魂の向上」、ボランティア活動による行動の学びを理念に掲げ、全国に2300名の会員を有する美容団体・ウッディチキンでは、水害発生直後から支援活動をスタート。8月には各店で集めた募金を被災サロンへ贈りました。

それと並行して、営業再開へ向けた美容機器や器具を送る支援も継続中です。石川県から被災地まで自ら運転するトラックで支援物資を運んだメンバーの行動も当ブログで既報しました。

【参考】
美容室を救え! 熊本水害とボランティア
http://boblog.jp/?p=3118

俺は美容業界のトラック野郎! 石川県→熊本県、水害支援・熱血ドライブ
http://boblog.jp/?p=4582

 

7月豪雨で、球磨川にかかる橋は何本も流された

 

最も被害がひどかった球磨村・渡地区の様子(9月16日現在)

 

球磨村の『あきよし』では、プレハブ店舗で営業再開

 

被災サロンへ、激励の色紙を贈る

ウッディチキンでは、9月16日に有志メンバー15名による被災地訪問を実行しました。現地で被災サロン支援のネットワークを主宰する平瀬裕一さん(U Brand/人吉市)の呼びかけで、当日は16名の被災者が集まり昼食を共にしました。

これまではLINEグループのやり取りで被災者と(必要物資など)情報共有してきましたが、約2時間にわたる交流でリアルな声を聞き、支援活動の強化を個々に誓っています。

「たくさんの良き仲間と出会いました。励ますつもりが、逆にパワーをいただきました。感謝しています」(山内 淳さん/and-A/静岡県)

「まだまだ復興には時間がかかりそうですが、募金をがんばります!」(若林由佳/WAKAHAYASHI/京都府)

「自分の家に二度と住めないかもしれない。同じ土地にサロンを建て直せないかもしれない。それなのに『嘆いても仕方がない。笑うしかないです!』なんて元気に振る舞っている方ばかりでした。被災者の皆さんは強いです。これから年に1回は訪問して、自分にできることをしていきたい気持ちです」(安井重満さん/Nap hair/愛知県)

会食ではサプライズもありました。
参加メンバーは、被災サロン各店へ応援メッセージを書いた色紙をプレゼント。どの色紙もカラフルで明るく力強い文言にあふれ、行間に応援の気持ちが込められています。

なお、新幹線の最寄り駅である新八代駅や熊本空港から現地の送迎では、このたびの支援活動の窓口役を担うAXIS(熊本市)の岡村磨里社長やスタッフが協力しました。

また、当日の夜は現地サロンへ支援物資を届ける協力をしてくれたBlue Ocean(八代市)の桑原明子さんを訪ねて、今後の支援活動の打合せも行いました。

 

自身は被災しなかったが、現地サロンの支援に奔走する平瀬さん

 

激励の色紙は、このたび訪問したウッディチキン各サロンスタッフが作成

 

被災者から聞く生々しい話に胸を痛める(写真中央=若林さん、右=上田真弓さん/COLZA/京都府)

 

8月に引き続き、2度目の募金を被災サロンへ

 

想いを込めた色紙は一人ずつ手渡しで。プレゼンターは安井さん

 

「これで営業再開できる!」やさしい会社の行動が、生きる力を育む

被災地訪問の数日後。「積徳」を掲げる同団体らしい思いやりがありました。

大阪府でヘアサロン7店舗、貸衣装店1店舗を展開するMORIWAKIが、人吉市で被災した貸衣装店へ着物を寄付したのです。

その店は1m40㎝の水が押し寄せ、店舗1Fにあった大量の衣装が流されました。残った衣装で営業しようとしましたが、絶対数の不足はいかんともしがたく営業再開できないでいました。

そんな現実を会食時に同店から聞いた森脇嘉三会長は、すぐさま行動に移します。帰郷した2日後にはMORIWAKIの貸衣装部門を担当する森脇文子さんが中心となって七五三、留袖、小振袖、振袖、訪問着……などたくさんの着物や帯、小物を宅配便に託しました。

「困ったときはお互い様です。会長から(着物を送るよう)指示されて、惜しいとかもったいないなんて気持ちはまったくありませんでした。仮に当店の在庫が減っても『ボランティアで贈りました』と胸を張って言えば、お客さまはきっとわかってくれる」(森脇文子さん)

MORIWAKIは東日本大震災の時にも被災サロンへ大量の着物を寄付しています。数年前に奈良県の衣装店が火事になった際もそうでした。今回もそんな会社の姿勢を理解しているスタッフが、中には休日出勤してまで、荷造りを手伝ってくれたとのこと。

この行動には根拠があります。MORIWAKIの経営理念は「やさしい会社をつくりましょう」(下の写真参照)。これは利他の心、感謝の心を持ち、相手の気持ちや立場にたって、感じる心を養うという目的に根ざしています。ともすると「自分さえ良ければいい」という無関心な社会をやさしい社会に変えていきたい。同サロンはそのための発信や行動をめざしています。

長年にわたる一連の活動が評価され、昨年に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で審査員会特別賞を受賞しました。

ウッディチキンを通じた日頃のボランティア活動も、このたびの着物の寄付も理念の延長線上にあるのです。

実は、4月の緊急事態宣言発出後、MORIWAKIの貸衣装店は2カ月間の休業を余儀なくされました。その間の売上はゼロです。決して経営的に楽なはずはありませんが、ためらいもなく着物を送る行動は理念の追求でしょう。

「経営者もスタッフも、やさしい会社づくりの行動を自然にできるよういつも心がけています。今回も被災サロンの『がんばろう』という気持ちをちょっとでも応援できたら嬉しく、できる範囲で支援させていただきました」(森脇会長)

 

※編集部注

当初、森脇さんは「ボランティアは人に言うことではない」と取材を固辞しました。その気持ちを尊重し記事化した経緯があります。

 

一方、着物が届いた貸衣装店では……。
思いがけない贈り物に、社長と幹部は「世の中で、それも美容業界でこんなに親身になって下さる方がいらっしゃるんだ。凄いね、有り難いね、有り難いね」と手に手を取り合って喜んだそうです。

「被災した時、涙は出ませんでした。でも、送っていただいた着物を見たときはあまりの感激で涙があふれました」(社長)

同社長は今年86歳、今なお現役の美容師です。MORIWAKIの善意で、仕事への情熱が一層かき立てられたと目を輝かせています――。

 

「このたびの豪雨災害で、ウッデイチキンの皆さんのご尽力、ご支援に支えられた美容室が多くいらっしゃると思います。現在はプレハブや工事中の店内で仮営業をしているサロンがほとんどです。それを森脇会長にお話したら『 まずは目の前のお仕事から始められるよう、大きな事は出来ませんが協力します』と言ってくださって (涙)、感謝しております」(幹部)

ウッディチキンでは今後も熊本豪雨水害の支援活動を継続する予定です。
ともするとコロナ禍ばかりが耳目を集める中、生活に困っている方々がいる事実を風化させないために。
当ブログでは引き続き被災地の様子を報じていきます。

 

 

MORIWAKIの経営理念

 

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