8月末に、第一希望だったサロン『Gigi fika』から内定の連絡をもらったという、足利デザイン・ビューティ専門学校(栃木県・足利市)美容総合科2年の前田 葵さん。
4月から本格化したコロナ禍により、オンライン採用、オンライン説明会、オンライン面接が一気に押し進められた美容業界で、一番困惑したのは就職活動に臨む美容学生だったのかもしれません。
秋採用も進む中、美容学生側の目線から、美容学生のリアルな声から、2020年春の美容業界オンライン採用を振り返ります。
Zoomでのオンライン説明会は“質問がチャット”に困惑
――この春、突然始まったオンライン採用活動。実際に参加してみてどうでしたか?
前田:説明会に行きたくてもいけない状況の中、オンラインでも参加できる環境と機会をもらえたのは本当にありがたかったです。そのサロンの特徴やカリキュラム内容、経営理念など丁寧に説明していただけて、直接参加する場合とそんなに変わりはなかったように感じます。特にZoomを使った合同説明会では一度にたくさんのサロンさんのお話を聞けるので、得られる情報は直接参加する場合より多く感じました。
――オンライン説明会で、困ったことはありますか?
前田:やっぱりサロンの雰囲気が十分には分からないので、このサロンに入りたい! このサロンの面接を受けよう! と思うには、決定打に欠けると私自身は思いました。サロンに入ってからの人間関係はどの学生も気になっているところなので、その部分は直接サロンにお伺いして感じたいと思いました。
――Zoomでの説明会で、使い方に困ったことはありませんか?
前田:学校で自分自身の携帯を使いZoom説明会に参加したのですが、特にはなかったです。ただ、Zoomだと“質問はチャットで”と指示されるのですが、使い慣れないのでどうやってチャットにすればいいのか最初は戸惑っている子も多かったです。
前田:もう1点は、自分自身はちゃんと聞いているつもりでも、画面を通して相手にはどう見えているか? がわからない不安がありました。メモを取っていることが分かるようにカメラの位置を工夫したり、あいづちをうったりして、聞いている姿勢を伝えていました。
Instaライブでの会社説明会は、実施サロンを探すのに時間がかかる
――Instaライブでの会社説明会に参加したことはありますか?
前田:私も気になっていたサロンのInstaライブ説明会に参加しました。会社やサロンの中を案内してくれ、スタイリストさんが学生向けに話しをしてくれるものなど、サロンを身近に感じることができ、雰囲気を知ることができました。行きたいサロンが決まっている子は、Instaライブの会社説明会に参加している場合が多かったですね。Instagramは使いなれているし、Zoomよりも質問がしやすかったです。
――Instaライブを使用した会社説明会で、不便に感じたことはありますか?
前田:入社したいサロンが決まっていて、そのサロンのInstagramをフォローしている場合は、会社説明会の日程を容易に知ることができたのですが。そうじゃない場合、サロンのホームページを見てもなかなかInstaライブの日程が探せなかったり、出ていなかったりで実施しているかどうかも含めて探すのが大変でした。新しいサロンを知るには、Zoomでの大規模な説明会が便利だと思いました。
大規模なオンライン説明会で行きたいサロンを探す学生は2~3割
――“第一希望のサロン”は、どうやって探す学生が多いですか?
前田:私の周りでは、採用活動が始まる前の段階で、約6割の友人が「あのサロンに入りたい」と何となくは決めていたと思います。残り1割は、学生時代からバイトしているサロンに迷いなく入社を決めていて、残り2~3割がオンライン説明会で行きたいサロンを探していたという印象です。今も3割くらいの友人が就職活動を続けています。
――学生時代からバイトをしている学生さんは多いですか?
前田:クラスで10人いないくらいです(40人クラス)。バイトを募集しているサロンも少ないですし、私も今までバイトをしたことはありません。けれどバイトをしている子たちは、そのサロンにそのまま入社を決める場合も多く、入ってからのギャップもお互いないと思うので羨ましいと思うこともあります。
自宅から通える距離で、やりたいことができるサロンがあれば一番いい
――前田さん自身は、どうやって“第1希望のサロン”を探し、決めましたか?
前田:自分がやりたいことの環境が整っているか、そのサロンの経営理念で選ばせていただきました。私はヘア&メイク、ファッションにも興味があり、作品撮りを美容師になっても続けたいと思っていたからです。さらに、そういうサロンが自宅から通える距離にあれば、それが一番いいと思っていました。
――経営理念で選ぶ、とは具体的にどういうことですか?
前田:どこのサロンも説明会で「経営理念」について説明があったのですが。その理念に基づいて、どういう行動をスタッフさんたちがしているか、その内容に共感できるかどうかを大切にしていました。私が第一希望で内定をいただいたサロン『Gigi fika』の経営理念は「人生に彩りを」なのですが、サロンワークではフィニッシュワークに力を入れているそうで、お店のInstagramにはお客さまのヘアスタイルがたくさんアップされています。その写真をみて、お客さまの個性がすごく引き出されていると感じ、私もそういう美容師になりたいと思いました。
営業前と営業後のInstagramのストーリーを見ています!
――周りの学生さんは、どのようにサロンを選んでいる場合が多いですか。
前田:デビューするまでの年数、カリキュラムの内容、そのサロンの技術はもちろん、福利厚生や給料を最重要視している子も多い(約8割くらい)ですが、私と同じように経営理念と自分自身の考え方が合うかどうかをみている学生も多いと思います。コロナ禍になった時、先生から「経営理念は、会社の本質を表す。本質がぶれない企業は、どんな時でも売り上げが伸びている」と言われ、その考え方がより強くなりました。
前田:また、サロンやサロンのスタイリストさん、アシスタントさんのInstagramも見ている学生はすごく多いです。私は、お客さまの仕上がり写真が一番気になります。その写真から、そのお店の技術や、写真の加工の方法からお店の雰囲気が感じとれると思うからです。また、営業前、営業後にあがるInstagramのストーリーから、スタッフさん同士の雰囲気や、どういう時間の使い方をしているかもわかることが多く、よく拝見していました。
聞けそうで聞けない、リアルな美容学生の声。特にこの春突然始まったオンライン採用活動の成果と美容業界との相性は、2021年の4月以降にしかわかりません。
しかし今後訪れるアフターコロナの世界でも、オンライン採用は必要不可欠なものになると考えます。その際、自分たちのサロンに合う学生を探すために、大規模説明会、会社説明会の内容や実施方法の選択、サロンスタッフを巻き込んだ普段からの情報発信がより重要度を増すことは間違いありません。
依然続くコロナ禍の中、自分たちのサロンに合った学生を探す上で、この記事が少しでもヒントになれば幸いです。ご協力いただいた、足利デザイン・ビューティ専門学校 美容総合科主任の海老原先生にも、この場を借りてお礼を申し上げます。
前田 葵(まえだあおい)/2000年6月23日生まれ、栃木県出身。現在、足利デザイン・ビューティ専門学校・美容総合科2年生。お客さまの人生に寄り添い、時に人生を変える「美容師」の仕事を幼いころからカッコイイと思い美容師になることを決意。自分の技術でお客さまの個性をより引き出せるようになることが目標。2021年4月より栃木県内のサロン『Gigi fika』で働く予定で、2020年8月末に内定した。
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