日々状況が変わる新型コロナウイルス問題、美容室はどう対処していくべきなのか？
正解は誰にも分らない中で、このトピックに対しての立場を共有する場を作るため、月刊BOBのインスタアカウントで4月20日からインスタライブを始めました。
第4回（5月4日）のゲストは新型コロナウイルスが発生した武漢にサロンを経営する京極琉さん。武漢の様子を追加取材をしてお送りします。
京極 琉［Salon Ryu（サロンリュウ）］
1994 年 10 月 10 日生まれ、上海出身。母の仕事の関係で、 12 歳から日本で暮らす。 高校卒業後、国際理容美容専門学校に入学。日中は美容サロンで研修、 夜は専門学校の授業という生活を続け、実践的な技術を習得する。サロン研修で痛感したのは、圧倒的な言葉の壁。 将来美容師として独立するためにも、技術とともにコミュニケーション能力を 磨かなくてはいけないと自覚し、日本語の勉強に初めて本格的に着手。2016 年には国際的に通用する技術を学ぶために、美容のトレンドを発信するロンドンに渡り、 Vidal Sassoon Academy, TONI & GUY Academy , SANRIZZ Academy を卒業。2017年7月7日、東京・赤坂に「 Salon Ryu」 をオープン。日本から世界をめざす。
http://www.salonryu.com/
新型コロナウイルスの中心地、中国・武漢市とサロンの状況
●新型コロナウイルスを取り巻く武漢の状況
湖北省武漢市 人口：5902万人（中国第９の都市）
2019年12月8日 「原因不明の肺炎患者」が確認
2019年12月30日 中国中央政府国家衛生健康委員会が事態を把握
2020年1月1日 湖北省武漢市の発症源とされる海鮮市場を封鎖
2020年1月8日 武漢市都市封鎖
2020年1月11日 中国湖北省衛生健康委員会が初の死者を発表
2020年1月16日 厚生労働省が新型コロナウイルスの日本国内初患者を確認
1月24日から30日 春節で大量に人が移動
2020年1月8日 武漢市の都市封鎖が解除
武漢の人口は東京23区とほぼ同じ
今日は湖北省武漢市にもサロンがある京極琉さんをゲストにお迎えしています。今（５月４日）、武漢は今、どんな感じですか？
都市封鎖が４月８日に解かれたので、街は日常に戻りつつあります。でもまだお客さまは半分以下ですね。３カ月弱どんなお店も閉まっていたから、これからだと思います。武漢はじつはとても大きな町で、人口は東京23区とほとんど変わらない。神奈川県や大阪府よりも多いんです。
そんなに大きいんだ。そもそも、なぜ武漢にサロンを？
出身地である中国にサロンを持ちたいとは常々考えていました。ただ僕は日本にいるので、信頼して任せられるパートナーが一番重要。セミナーで中国に行ったときに紹介してもらった美容師のフレディが武漢出身で、彼と意気投合できたのが大きいですね。一人当たりGDPは12万4,560元。上海市、北京市とひけをとらないんです。競合が多い上海などよりもビジネスになるかもと思いました。おかげさまですぐに席が足りなくなり、次の年には同じ武漢市にもう1店舗、170平米のサロンをつくりました。（現在は1店舗に集約）。
以下は武漢にある琉さんのサロン、「Salon Ryu Wuhan」の店内。セット面18、スタッフ20名。2017年に設立。
ぼくはずっと日本にいたので、お店を任せているフレディと電話などで連絡を取っていましたが、こうなったらもう何もできないんです。お店は全部閉めるどころか、都市を封鎖することになって、外を出歩くことも許可が要る状態。ひたすらステイホームだから、みんなつらかったと思います。武漢には20名のスタッフがいて、幸いスタッフから感染者は出ず復帰できてよかったです。
中国政府の休業補償について
スタッフに対する給与補償やサロンへの国の補償などはどうなっているんですか？
中国政府は部幹封鎖をした次の日に、コロナによって経営が苦しい企業には従業員を解雇しない限り補助金を給付しています。企業の損失分を国が一部補填することになっているんです（2月には中小企業や零細企業の社会保険料の免除が発表された）。中国はエリア格差が激しいから、家賃の補填は省によります。武漢のある湖北省では「小企業および零細企業に対して、免除金額の50％以下を補助する」という政策のようです。
怖がったりモチベーションが下がるスタッフたちはいなかったんですか？
スタッフは全員で20人いますが、中国ではなかったですね。自分たちだけじゃなくて、みんなそうだから仕方ない、という感じ。町を出歩けない状態ですから。
基本的に都市封鎖になると外に出られないんです。基本的に家でじっとしているしかありません。ひたすら我慢の時期でした。それぞれ家で何をしていたかまでは把握していません。
封鎖がとけて最初にやったこと
封鎖がとけて最初にしたことは何ですか。失客対策など何かしましたか？
サロンの消毒です。専門の業者を読んで、あらゆる場所を噴射器で消毒してもらいました。消毒液？ 何かはわからないです。失客対策はとくにしてないですね。ずっと美容室に行けてなかったわけだから、来ると思ったし。
それはまったく。今辞めてもどこもやっていないですしね。みんな、再開を心待ちにしていたと思います。
カット＋ブリーチオンカラーで4万円
武漢のサロンはカット料金やカラー料金はいくらなんですか？
主力メニューは赤坂のサロン同様、ブリーチなんですが、グラデーションカラーとカットで980元（約2万円）。一番いい薬剤を使うとさらに980元がプラスされるので、4万円です。カットは三段階あって、真ん中が480元（約8千円）。武漢にある美容室の中では中級くらいです。もっと高級なサロンはあるので。多分今は日本よりも中国のほうが単価は高いんじゃないですかね。
武漢のスタッフにティーチインする様子（2019年11月撮影）
ぼくは上海で生まれて、12歳の時に母の仕事のために日本に来ました。中学、高校も日本。でも、中国人の友達とばかり遊んでいたので、日本語があまり話せなかった。高校3年生でいざ将来を考えなくてはいけない、というときに腕次第で成功できる美容の仕事に魅力を感じて、美容師を志しました。日本語を真面目に勉強したのはこの時期からですね。それで、働きながら通信の美容学校に通って。言葉の問題で、サロンに入るのは苦労しました。
わずか23歳にして赤坂の一等地に「 Salon Ryu」を出店できたのはなぜ？
本当は表参道とか銀座で探していたんですけれど、駅から遠い物件しかなくて。でも僕がめざすのは「最高峰のラグジュアリーサロン」なので、場所にはこだわりたかったんです。コンテストや留学で技術は磨いてきたつもりなので、高単価をチャージするサロンを個室型で実現しました。ロンドンの留学から帰ってきてオープンしたので、顧客もゼロ。そこからのスタートでした。費用的に無理のないテナントを探したら、最終的に赤坂になったんです。
かかわりがあるロンドン、台湾、香港には出店していたいですね。日本は人口減少なので、店舗を増やしていくイメージはありません。
教育と若手美容師の育成に力を入れていきます。その第一弾が、秋くらいに立ち上げる動画教育サイト「Kyogoku Academy」。対象は美容学生と若手スタイリストで、技術だけではなくＳＮＳマーケティングや集客などのコンテンツも入ります。ぼくはサロン以外に「KYOGOKU PROFESSIONAL」というメーカーもやっていて、「ＫＧアーティスト」として若いスタッフを応援しています。ムラシャンやカラー剤をラインナップしていますが、目的はクリエイティブな活動をしたい才能ある若手をサポートすること。クリエイティブは時間もお金もエネルギーも使うので。ビジネス同様、クリエイティブな活動はとても大事なことだと思っています。コロナによっていったん活動がストップしてしまっているけれど、そこがすべてのモチベーションなんです。
