休業や自粛が緩和され、徐々に美容室に活気が戻ってきました。休業明けの都心部のサロンは予約が殺到し、コロナ禍でも過去最高売上という実例も多数。しかし、予約を重ねて密になることは避けねばならず、お客さまのニーズも滞在時間減にあります。
限られた予約数、限られたスタッフ人数、限られた施術時間。これはそのうち戻るというものではもはやなく、今まで通りのサロンワークの考え方だと歩合の給与は上がらず経営も厳しくなってしまいます。たった今は仕方がなくても、これから継続していくためには「指標」を変えざるを得ません。
これまでは総売上、これからは時間売上に注目!
これまで月刊BOBが追ってきた「売れっ子スタイリスト」は、総売り上げ(または技術売上)が指標。
シンプルでわかりやすいですが、たくさんのアシスタントの協力を得て、長時間のサロンワークで、たくさんの客数をこなせる人が有利です。多様な働き方を評価できる指標ではありませんでした。
おりしも美容師の人手不足により、時間に制約があるママさん美容師やパート美容が貴重な戦力となっていたタイミング。さらに働き方改革によってサロン経営の軸は「短い時間で成果を出す」にシフトしつつある中、このコロナ禍が起こり、お客のニーズも変化し、否が応でも働き方を変えざるを得なくなりました。
リモートでできることがないのか、多くの美容師たちが模索。EC店販やオンラインカウンセリングなど、「サロンにいなくてもできる売上づくり」も進みました。
売り上げの総額よりも、「その売り上げは何時間で上げたのか?」。withコロナ時代は、1時間あたりにどれくらい売り上げたのか、”タイムパフォーマンス”が大きな指標となります。
単に時間あたりの売上ではなく、“タイムパフォーマンス”を向上したい
これまで、スタイリストの指標は「売り上げ」ないしは「生産性」でした。時間の軸がなかったため、働き方とのバランスが取りにくかったと言えます。タイムパフォーマンスはいわゆる人時生産性。BOBでは、スタイリストの1時間あたりの売上と定義しました。
生産性=1人あたりの売上高 (サロン総売上÷スタッフ人数)
人時生産性=1人あたりの1時間当たりの利益高(【サロン総売上-原価】÷スタッフの総労働時間)
タイムパフォーマンス=1人あたりの1時間当たりの売上高(技術売上÷(労働時間×人数))
タイムパフォーマンスの計算式
①タイムパフォーマンス=1スタイリストの1時間当たりの売上高(②1スタイリストの技術売上÷③1スタイリストの労働時間)と設定しますと、
●ワンオペの場合 5,250円
10時から19時までサロンワークで働いて、1時間休憩したら③は8時間。その日の総売上のうち、技術売上②が4万2千円だったら、1時間上がりの売り上げ、つまり5,250円がタイムパフォーマンス。
●専属アシスタント1人がいる場合 2,625円
2人でその売り上げを上げたことになります。③がアシスタントの労働時間も入って16時間になるため、2,625円がタイムパフォーマンス。
●4人のスタイリストに2人のアシスタントが流動的につく場合 3,500円
この場合は、1人のスタイリストに0.5人がつくことになりますので、③に0.5人分の時間をプラスしないといけません。つまりそのアシスタントの1日の労働時間(8時間)÷2=4。③が12時間になるので、3500円になります。
ワンオペのほうがタイムパフォーマンスは高くなりやすいですが、対応できるお客さまの数に限界があるため、チームで上げていくことは有益だと捉えられるでしょう。
なぜ店販料金は入れないの?
スタイリストのタイムパフォーマンスは総売上ではなく、技術売上で計算します。店販料金は利益率が商品やサロンによって大きく異なるためです。技術単価は原価に近いので、比較の際にブレ幅が少なくなります。その人の技術価値を図りやすくなるとも言えます。
とはいえ、これからはEC店販などの時間外売上も重要になってくるので、店販売上はますます重要になってくるでしょう。店販売上に関しては、違った形で表記を併記していこうと考えています。
タイムパフォーマンスに重要なこと
タイムパフォーマンスを高めるためには、以下のようなことが必要です。
・短時間で単価アップ
・時間外売上
・店販力アップ
・お客との関係性を強化
タイムパフォーマンス美容師の一例
MAYUMI[MISS ESSENCE(ミスエッセンス)/愛知・名古屋]60歳
月刊BOB2020年3月号「最高売上への挑戦」取材
2019年12月のタイムパフォーマンス 25,362円
(23日出勤、1日8時間カウント《184時間》、アシスタント3名専任3名)
RYUSEI[Beleza(ベレーザ)/東京・渋谷 ]24歳
月刊BOB2020年8月号「新しいサロン様式」取材
2020年3月のタイムパフォーマンス 9,777円
(30日出勤、1日10時間カウント《総労働時間300時間》、専属アシスタント2名)
これまで以上にお客との信頼関係が必要に
タイムパフォーマンスは、単なる時短作業ではありません。店販や時間外の売り上げはお客との信頼関係が大前提であり、そこがないと成り立たないのです。むしろ、これまで以上に深い信頼関係が求められるでしょう。
密な空間をつくらずに、お客との関係はより密に。
タイムパフォーマンスが上がれば余暇が増え、クオリティオブライフも上がります。
美容師が豊かに生きるためにも、タイムパフォーマンスを高めていくことが必要になるでしょう。
詳しくは月刊BOB10月号(9月1日発売)『美容師のこれからの指標はタイムパフォーマンス』(仮)にて!
この号より、月刊BOBは「タイムパフォーマンス」に舵を切り、美容室に新しい指標を示していきたいと思っています。
さまざまなエリアのさまざまなキャリアの美容師さんたち(ママさん美容師やデビューしたてのスタイリストなど)が登場し、ともにその指標づくりをしていきます。リアルな追っかけ連載企画も準備。
ご期待ください!
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