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美容師の「センス」を刺激する美術館・博物館 9【美術館ガイド・浦島茂世 選】

1人ひとりに似合う髪型のフォルムやデザインをつくりあげることと、芸術作品、建築物はとても近いのではないでしょうか。インスピレーションや自身のクリエイティブ作品のアイデアを得るために、美術館・博物館巡りを趣味にされる美容師さんも多いと思います。

今回年間約100館以上へ足を運ぶという美術館ガイドの浦島茂世さんに取材をし、美容師がぜひ訪れるべき美術館・博物館を選出していただきました!

 

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photo : Asako Hoshi

【浦島茂世氏 プロフィール】  フリーライター。神奈川県鎌倉市出身。時間を見つけては美術館やギャラリーに足を運び、その情報をWebや雑誌「OZmagazine」や「東京人」など幅広いメディアで発信中。著書に「東京のちいさな美術館めぐり」、「企画展だけじゃもったいない 日本の美術館めぐり」(株式会社GB.)など。All About美術館ガイドも務める。

 

『企画展だけじゃもったいない日本の美術館めぐり』 
浦島茂世著/G.B.刊
※この記事は、髪書房WEBZINEにて2018年12月に取材・掲載したものです。

 

美術館、どうやって見るのが正解!?

浦島「正解はないのですが、まずは説明を読む前に、展示全体を見るといいかもしれません。自分のペースで歩いていると、ふと足が止まる作品があるんですよね。何で足が止まったのか、少し考えてみましょう。そして、その作品の説明を読むと、自分自身に対しても新たな発見があるかもしれませんよ」

編集「今回、美容師さんに行ってほしい美術館・博物館を選んでもらいましたが、どういう視点で選んでいただいたのでしょうか」

浦島「例えば、皆さんもよくご存じのエドヴァルド・ムンクの《叫び》という作品がありますが、実はあの作品ってものすごく大きいんですよ! 近くでよく見ると筆の跡が見えるし、教科書で見るのと色も微妙に違います。私の想像で恐縮ですが、美容師さんって、何かの跡を見て“この人はここに気をつかっていたんだな”と気づけるし、気づくことに意味がある職業の方だと思うんですね。SNSやWEBの情報ばかりでなく、実際に自分の目で見ることの大切さも分かっていらっしゃる方が多いですしね」

編集「そうですね」

浦島「あとは、時代の流れを読むのが仕事、という面もあります。時代を読む力って、実は美術館と博物館でつけることができるんですよ! 具体的にお伝えすると、同じ時代の美術作品を見て、共通点を見つけることができるようになれば、過去の時代を切り取ることができるようになるんです。それができれば、これが今だ! と今の時代を読んだアウトプットもできるようになります」

編集「なるほど! 美容師と美術館。やはり切り離せない関係のようです」

浦島「今回は数館選出させていただきましたが、まだまだおすすめしたいところがたくさんあります。ぜひ訪れてみてください!」

 

1.モエレ沼公園 【北海道・札幌市】

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日系アメリカ人の彫刻家イサム・ノグチが手がけた公園です。「全体をひとつの彫刻作品とする」というコンセプトで作られた、巨大な彫刻でもあります。美容師さんの仕事も、その人に似合う髪型を“彫りだす”という意味で共通点も多いと思いますし、ノグチが設計した公園遊具などからインスピレーションを得ることができる場所だと思います。

約189ヘクタールととても広いため、入口でレンタル自転車を借りて回るのもおすすめ。1日に3~4回ショープログラムが見れる「海の噴水」も必見ですよ![2020年の運転期間:2020年6月19日(金)~10月20日(火)] 遠方で行きづらい方は、Google Earthで一度訪れてみてもいいかもしれません。

「海の噴水」
「海の噴水」
上空から見たモエレ沼公園
上空から見たモエレ沼公園

写真提供:モエレ沼公園

■モエレ沼公園
ホームページ:http://moerenumapark.jp/
住所:北海道札幌市東区モエレ沼公園1-1
料金:入園料無料
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

2.十和田市現代美術館 【青森県・十和田市】

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西沢立衛(にしざわりゅうえ)が設計した、現代美術専門の美術館です。西沢立衛は、美容師さんにも人気の、豊島美術館(香川県)も設計している建築家。白いキューブが連なる建物の中には、1室に1作品ずつが常設展示されているのが特徴です。キューブ型の展示室では、33組の現代美術家それぞれの個性的な世界観を存分に感じることができ、新たなインスピレーションを得ることができるのは間違いありません。

アジアや南米も含め、グローバルに活躍する芸術家が、十和田市現代美術館のためにつくった作品たちはもちろん、まち全体でアートを楽しむことができるのも十和田の醍醐味!

≪スタンディング・ウーマン≫ ロン・ミュエク 撮影:小山田邦哉
≪スタンディング・ウーマン≫ 
ロン・ミュエク
撮影:小山田邦哉
≪ファット・ハウス≫ ≪ファット・カー≫ エルヴィン・ヴルム 撮影:小山田邦哉
≪ファット・ハウス≫ ≪ファット・カー≫ 
エルヴィン・ヴルム
撮影:小山田邦哉

写真提供:十和田市現代美術館

■十和田市現代美術館
ホームページ:http://towadaartcenter.com/
住所:青森県十和田市西二番町10-9
料金:常設展:一般510円、企画展:一般800円、常設展と企画展:一般1200円ほか ※イベントなどで別途料金の場合あり
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

3.金沢21世紀美術館 【石川県・金沢市】

撮影:渡邉 修

建物の周りには壁がなく、街にとけこんでいる現代美術専門の美術館。円形の建物は4つの出入り口を持ち、どこから入っても楽しめるのが特徴です。すみだ北斎美術館(東京)も設計した妹島和世(せじまかずよ)と、西沢立衛(にしざわりゅうえ)によるSANAAの設立。同館を象徴するレアンドロ・エルリッヒの≪スイミング・プール≫、ジェームズ・タレル≪ブルー・プラネット・スカイ≫は必見です。老若男女問わず楽しめる美術館は、人と人との関わりや日常を改めて見つめ直すきっかけになる作品が多く、日々のサロンワークにも新たな気づきを得られるかもしれません。

≪スイミング・プール≫ 2004年 レアンドロ・エルリッヒ 金沢21世紀美術館蔵 撮影:渡邉 修
≪スイミング・プール≫ 2004年
レアンドロ・エルリッヒ
金沢21世紀美術館蔵
撮影:渡邉 修
雲を測る男
≪雲を測る男≫ 1998年
ヤン・ファーブル (C) Angelos bvba
金沢21世紀美術館蔵
撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ

写真提供:金沢21世紀美術館

■金沢21世紀美術館
ホームページ:https://www.kanazawa21.jp/
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
料金:コレクション展:一般360円ほか※企画展は展示内容により異なる
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

4.東京都庭園美術館 【東京都・港区】

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まず注目すべきは、当時最新のアール・デコ装飾様式(ヨーロッパ、アメリカを中心に1910年代半ば~1930年代にかけて流行。直線的なデザイン、幾何学模様モチーフ、原色の対比などが特徴)を取り入れたモダンな建物と内装。2015年には、国の重要文化財に指定されています。元々は、アール・デコの全盛期にフランスに滞在していた朝香宮(あさかのみや)夫妻の邸宅だったこともあり、他の美術館とは違った雰囲気で展示を楽しむことができるんです。

また、1920年代はヨーロッパでファッションが大流行した時代。庭園美術館の企画展はファッションに関するものも多く、ファッション史を勉強したい美容師さんにおすすめです。

東京都庭園美術館 芝庭
東京都庭園美術館 芝庭

写真提供:東京都庭園美術館

■東京都庭園美術館
ホームページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/
住所:東京都港区白金台5-21-9
料金:庭園入場料 一般200円ほか ※企画展は展示により異なる
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

5.ワタリウム美術館 【東京都・渋谷区】

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photo:Asako Hoshi

青山の中心で、現代美術作品を楽しむことはもちろん、充実したミュージアムショップ、カフェがあり、ゆっくりと1日中過ごすことができます。同館は、作品の説明書きがとても丁寧で、自分なりに作品を見た後に読むと、より作品への理解を深めることができるんです。他の美術館よりも企画展の幅が広く、アジア、日本のアーティストの企画展を開催していることも多いため、海外からのお客さまも多く訪れています。国際的アートの中にある日本アートの立ち位置という視点で選ばれた作家・作品たちから、世界の中にある日本の美容の在り方についても重ねて考える機会になるのではないでしょうか。

■ワタリウム美術館
ホームページ:http://www.watarium.co.jp/
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
料金:大人1,000円/学生(25歳以下)800円 ※展示内容により異なる
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

6.すみだ北斎美術館 【東京都・墨田区】

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2016年11月に開館した注目の美術館です。金沢21世紀美術館の設計を手掛けた1人である妹島和世氏が手がけた建物は、両国という下町にありながら非常に近代的。

江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎といえば皆さんご存知だとは思いますが、あのゴッホ(フィンセント・ファン・ゴッホ)もファンだったという天才ぶりを、ぜひ美容師の皆さんにも見てほしいんです。《冨嶽三十六景》を代表とする浮世絵、肉筆画はもちろんですが、北斎が残した作品は現代の私たちが見ても、斬新で天性の才能を感じさせるものばかり。世界に影響を与えた天才絵師の仕事に、感性が刺激されると思いますよ!

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写真提供:すみだ北斎美術館

■すみだ北斎美術館
ホームページ:http://hokusai-museum.jp/
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
料金:常設展:400円 ※企画展は展示により異なる
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

7.原美術館 【東京都・品川区】

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2020年12月で閉館されることが発表された現代美術専門館。(2021 年からは、別館ハラ ミュージアム アークの館名を「原美術館ARC」と改め、群馬県にて引き続き活動していく。)一度訪れて欲しい理由は、旧個人邸宅を活かした美術館だからこその、ここでしか見ることのできない作品のユニークさにあります。一歩入れば、モダンな建物をいい意味で裏切る斬新なインスタレーション作品が並びます。なんと、建物に穴をあけて制作した作品もありますよ!

中庭を見渡すことができる、ガラス張りのカフェ「カフェ ダール」もおすすめ。月曜日は美術館とともに休館していますが、仕事がお休みの火曜日にぜひ訪れて欲しいです。

中庭と「カフェ ダール」
中庭と「カフェ ダール」

写真提供:原美術館

■原美術館
ホームページ:http://www.haramuseum.or.jp
住所:東京都品川区北品川4-7-25
料金:一般1,100円 原美術館メンバーは無料
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

8.国立民族学博物館 【大阪府・吹田市】00みんぱく外観

今回ご紹介する中では唯一の博物館、通称「みんぱく」は特に美容師さんにおすすめしたい場所! いわゆる芸術品はありませんが、1日、2日では見きれない量(1万2000点以上!)の、研究者が世界各地で収集した楽器や民族衣装などを見ることができるんです。例えば、ザンビアに住むチェワの仮面結社「ニャウ」の仮面や、アイヌの魚皮製の靴なんて物も展示されています。9つの地域展示に展示されている衣装だけを見たとしても楽しめますし、見たことない物を探しても面白いですね。美容師さんが行けば、必ず新しい発見がある場所だと思いますよ。

アメリカ展示場
アメリカ展示場
南アジア展示場
南アジア展示場
写真提供:国立民族学博物館
■国立民族学博物館
ホームページ:http://www.minpaku.ac.jp/
住所:大阪府吹田市千里万博公園10-1
観覧料:一般420円、高校・大学生250円、中学生以下無料 ※特別展は展示内容により異なる
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

9.大原美術館 【岡山県・倉敷市】

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実業家、大原孫三郎により、1930年に日本で最初につくられた西洋美術館です。当時最先端だった19世紀後半の印象派(クロード・モネ、ポール・ゴーギャン、アンリ・ルソーなど)の作品からは、鮮やかな色彩と大胆で自由なタッチを楽しむことができます。

大原美術館の特徴は、本館の他にも展示棟があり、近現代作品と民藝作品もそれぞれ展示している点。若い芸術家の育成も支援していて、歴史的な遺産から現代の美術品までを見ることができます。時代の流れや特徴を感じることができるので、時代の一歩先を見据える必要がある美容師さんにこそおすすめしたいと思い、選びました!

大原美術館 内観
大原美術館 内観
写真提供:大原美術館
■大原美術館
ホームページ:http://www.ohara.or.jp/201001/jp/index.html
住所:岡山県倉敷市中央1-1-15
料金:一般1300円ほか
営業時間、定休日はホームページにてご確認ください。

 

美術館ガイドの浦島さんがおすすめする、美容師のための美術館・博物館。いかがだったでしょうか。

自分のペースで美術館・博物館を回るのに慣れてきたら、次は好きな作家や面白いと思った人を見つけて、作品が所蔵されている美術館を巡ってもいいかもしれません。

浦島さん曰く「美術はアウトプットの塊!」だと。ということは、日々のサロンワークで1人ひとりのお客さまに提供する髪型も、アウトプットであり、美術なのかもしれません。

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