月刊BOB2020年3月号特集「最高売上への挑戦」で自身の最高売上記録1000万円に挑戦し、1300万円という驚異の個人売上をつくった潮海達矢さん[shiomi H(シオミエイチ)]。新型コロナが発生して休業を決めた4月(4月8日~22日の15日間、3店舗あるサロンを休業)、同時に着手したのは「スタッフもお客さまも、安心して働ける環境づくり」だった。
潮海達矢[shiomi H(シオミエイチ)/兵庫県神戸市]
1979年、4月11日生まれ。福井県出身、兵庫県育ち。ル・トーア東亜美容専門学校を卒業後、神戸市内店舗を経て2015年、神戸・元町の中心地にshiomi H(シオミエイチ)をオープン。以来、右肩上がりの成長を続け、3店舗に。2019年12月に最高売上1300万円を達成する。スタッフ18名(全店舗)。
コロナをきっかけに、サロンを改装
「コロナ禍になって最優先したのは、みんなの命。この時点で安全を優先して、3月後半に休業を決断しました。とはいえ、個人企業の美容室は、何カ月も休めるほど、内部留保があるわけじゃない。また、美容は基本的にお客に接しないとできない仕事。ただサロンを休むだけにはしたくなかったんです」
みんなの生活を守るためにはいつかは再開しないといけない。しかし、コロナはこれからずっと続くだろう。潮海さんは休業中と同時にサロンの改装にも着手した。すべてコロナ対策の工事だ。
お客さまへは休業を「安心をつくるための期間」として、工事内容を告知。再開後の安全性と伝え、期待感を促した。
①換気対策 窓
開口できる窓に交換し、空気の滞留を防げるようにした。
ビフォア:奥の窓は開かない造作
アフター:開口できるように窓を付け替え。空気が流れやすくなった。
②換気対策
換気扇部分も除菌タイプのフィルターに交換
③エアコンの交換
ウイルスをシャットアウトすると言われているヘパフィルター(バイオ抗体フィルター)を使ったエアコンにチェンジ。
④飛沫防止シートもおしゃれに
見た目が微妙な飛沫シートもインテリアの一部に。
⑤各席に除菌剤を設置
天然成分100%のアラエルという商品で、ミネラルをつかった除菌。
⑥服の除菌
光の力で、酸化チタンとエタノールが反応して、除菌してるといわれている商品。
⑦マスクのかわり
ウイルスをブロックすると言われている飴。マスクをいやがるお客さまに。
⑧除菌スプレー
マスクや顔に使用。
⑨空気を除去してくれる植物
プラティケリウム。自然の力も取り入れ、インテリアに。
サロンにいるほうが、安全
「こんなにやってくれるオーナーのところだったら、安心だね」
スタッフの親御さんからの一言。スタッフからは「家に居るよりサロンのほうが、安心安全」との声が。
営業していたサロンは、現場のスタッフから不安だ・休みたい、といった声が多く、社内に不和が生まれたところが多いと聞く。
コロナ対策はシオミさんのところがダントツに速かったよね、と多くのお客に褒められた。徹底したその取り組みは、他サロンの参考になるとディーラーやメーカーからズームなどで取材を多数受けたという。
「うちのお店がいいだけじゃダメなんだ、って。美容室は安全な場所。そう思ってもらうために、ぼくがやったことはすべて公開しようと思ったんです」
コロナを美容業が信頼を勝ち取るためのチャンスととらえた。
オペレーションの変化と見える化で売り上げキープ
コロナ対策の工事を終え、4月22日からサロンを再開。予約の取り方も当初は密にならないよう、2枠で、スタッフ1名に。ステイホームでお子様が家にいるご家族も多かったため、時間貸し切りを行ったり、小学6年生以下のお客さまを対象に無料カットサービスを行った。
コロナによって変わったのは、それまでだったらあえて説明しなかったようなことをしっかり「見える化」し、お客に伝えることで安心を生んでいること。安心が信頼につながり、紹介客も増えた。
客数を徐々に戻し、予約の制限も外し、5月の売り上げは470万6900円(2019年5月は472万7200円)。
これからの課題は、さらなる時短。ビフォーコロナでは、カット・カラー・トリートメントで2時間だった。現在は同メニューで1時間半。30分の時短に成功している。
「お客さまの心境もすこしずつ変わってきました。サロンにくるのが、息抜きの方もおおくいらっしゃいます」
アシスタントは休業中に動画制作
5月15日まではアシスタントは休業だったが、その間に動画制作の習得を課した。
「これからの情報発信は、動画になる。若い世代は比較的身近だから、お客むけのセルフカットやスタイリングなどの動画をつくってもらいました」
以下はスタッフがつくった動画。
アフターコロナにむけて
雇用の体系やお客の動向がこのコロナで変わった。ここを再スタートと考えて、サロン営業は取り組みをしていくことが大事だと潮海さんは考える。時短で高単価のメニュー開発。アフターコロナはこれしかないと感じているという。
「コロナ第二波が起こることも視野に入れて。美容に絡んだ、新しい業態も考え中です」
アフターコロナの試みは、スタートラインに立ったばかりだ。
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