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美容師だからできるマツエクで、タイムパフォーマンス向上

美容師のためのアイラッシュ理論・技術を独自に開発し、美容師のタイムパフォーマンス向上を実現している(株)EYE STUDIO、(株)WINK代表取締役の中村由香里さんを取材しました。京都府を中心に美容室NOISMを展開する代表・中村芳進さんとともに、美容室で生産性を上げている仕組みについてレポートします。

 

濃い時間をスタッフ間で共有できるから時短につながる

まつ毛エクステンションのメニューを取り入れている一般的なサロンのオペレーションは、お客「A」のヘアカラー塗布が終わったら、お客「B」のマツエク施術に入り、マツエク施術の合間にお客「A」のヘアカラーの染まり具合をチェックしている。これらから紹介する方法は、他の技術と合わせてマツエクのお客も同時施術できる方法。

●マツエクは、1人のお客を1人の技術者が行うという概念を、サロンのスタッフみんなで共有するという考え方にすることで、ヘアの施術を行いながらマツエクが同時施術できる。

●4月に入社したアシスタントが、その年の12月にマツエクだけで100万円を売り上げた。

スタイリストもアシスタントも、1日の時間を無駄なく使えて濃い時間を共有でき、そのうえ売り上げを伸ばすことができる。その秘訣を紐解いていく。

 

美容室にもともとある設備でマツエクはできる!

新たに美容室でマツエクを取り入れるときは、マツエクのためのスペースやベッドなどの設備投資はなくても問題ない。もともと美容室にあるシャンプー台が活用できる。シャンプー台のマツエクで月に40~50万円を売り上げているスタッフもいる。

現在は、シャンプー台に取り付けるマツエク施術のためのツールを開発中。これが完成したらシャンプー台がそのままマツエクのスペースとして共有でき、これまでより生産性がアップして快適な施術も提供できる。さらにこのツールは、ヘアカラーの放置時間中にマツエクができるのも特徴。片目のマツエクが終わったらヘアカラーをシャンプーし、シャンプーのあとで残った片方のマツエクを施術するといった使い方もできる。美容室にもともとある設備が使えるので特別なスペースを確保する必要もなく、大きな設備投資の必要もない。

写真は通常のシャンプー設備

 

時間効率を上げる秘訣 ①装着スピード

マツエク装着の最高スピードを出したスタッフは、6分で100本を装着。ヘアメニューと掛け持ちすると手が空く時間は限られているが、前回つけたマツエクをオフする(取り除く)ところまでをアシスタントにやってもらえば、自分の手が空いた時間にマツエクができる。これまでのように、100本の装着に60分近い時間をかけていたらこんなことはできない。空いた時間をつかって施術するのでスピードへの意識も高まり、おのずと装着スピードも上がってくる。

100本を10分程度で装着できるのは、美容師が習得するということにも大きなアドバンテージがある。その理由の1つとして、マツエクとワインディングの共通点にある。ワインディングは約60本を20分で巻く、マツエクは100本を10分前後で装着する。単調な作業を短時間で完了することは、ワインディングのトレーニングで十分身についているので、美容師にとって得意な分野でもある。美容師が考えた理論・技術システムなので美容室で展開しやすく、美容師にとっても取り組みやすくなっている。もちろん、個々のお客に提案できるためのマツエクのデザインも習得する。

 

時間効率を上げる秘訣 ②同時進行

同時施術で最大10人のお客をアシスタントと一緒に掛け持ちしたケースもある。マツエク5人、ヘア5人を掛け持ちするとしたら、最初に施術の順番を頭の中で組み立てる。カット、カラー、放置時間、マツエク、マツエクのオフと、順番をずらしながら組み合わせることで、お客を待たせることなく同時施術できる。

マツエク専門店では、技術者1人が1人のお客を最初から最後まで施術する。しかし美容室では、カットはスタイリスト、ヘアカラーはアシスタントが塗布するという、1人のお客を複数のスタッフで同時施術するのが当たり前というベースがある。マツエクも2人のスタッフが交代で施術し、最終のチェックをメインの担当者が行うことができる。さらに、カラーしながらカットはできないが、カラーしながらマツエクはできる。ヘアのメニューと組み合わせて同時施術メニューの幅が広がる。

これを複数のお客で同時進行すれば、かなりの客数をこなすことができる。カット、カラー、マツエクを同時進行するとしたら、カットするスタッフにどのタイミングでバトンタッチするかを計算しながら施術すればいい。そして、それができるもう1つの秘訣は、アシスタントからスタイリストまで、スタッフ全員がマツエクができることにある。

 

時間効率を上げる秘訣 ③アシスタントもアイリスト

美容師免許を持っていればアシスタントでも施術できる技術がマツエク。入社後の新人研修でマツエクも同時に教育しておけば、サロンへの配属と同時に入客でき、配属されたその月から最低でも月に6~7万円は売り上げられる。売り上げの多いアシスタントは、月30万円くらいは売り上げている。

これまでのアシスタントは、1年目の技術売上は0円というのが普通だったが、入社1年目の社員が12月のマツエク売上100万円を越えた例もある。アシスタント2年目で180万円を上げたケースもある。これならアシスタントの給与をマツエクの売り上げだけで十分まかなえる。給与が50万円以上のアシスタントもいる。

 

時間効率を上げる秘訣 ④スタッフ全員がアイリスト

スタイリストもマツエクの技術を習得する。トップクラスの売り上げを上げているスタイリストは、ヘア300万円、マツエク300万円、合計600万円を売り上げている。

技術指導をしているサロンに50代後半でサロンに復帰したスタイリストがいるが、マツエクの売り上げだけで月に40~50万円を売り上げている。さらに、50代から80代までのマツエクのお客を持っている。80代のお客がいるということは驚きだが、マツエクを注文する人は若い人だけではない。

いつも若々しくいたいという思いがあれば、年齢に関係なく幅広い層のお客が見込まれる。もしかすると、美容室だからこそこの年代のお客が取り込めているのではないか。スタッフの年齢が高いということは、それに見合った年代のお客が付きやすいといえるかもしれない。

 

時間効率を上げる秘訣 ⑤男性美容師もアイリスト

お客にとって男性美容師が施術することに抵抗がないだろうか。いきなり男性スタッフが入客すると「えっ!」という反応をするお客もいるという。しかし、きれいな仕上がりで、きちんとした接客をすればお客も納得してくれるようだ。

マツエクは、前髪をカットする距離感とだいたい同じくらいなので、やってみるとあまり抵抗感はないらしい。丁寧な仕事をすると「男の子でもこんなにできる」と、次からは抵抗なく受け入れてくれるお客が多い。

マツエクの施術中は、お客は目を閉じているぶん、耳と鼻の感覚が研ぎ澄まされる。だから、お客に触れるときやちょっとした言葉遣いに細心の注意を払っている。男性スタッフの方が、テープのはがし方1つ取っても優しかったという感想もある。意外に思うかもしれないが、男性スタッフの指名も結構ある。対応がよければ次回予約につながるし、ヘアの指名にもつながる。それでも気になるお客は、予約の時点で女性美容師を指名してもらっている。

 

新人にとってマツエクはサロンワーク体験

新人のアシスタントにとってマツエクはよい接客体験になるので、スタイリストデビュー後の接客に抵抗なく入れるというメリットもある。

また、お客との会話が苦手なアシスタントにとっては、マツエクはベストなコミュニケーションの体験となる。マツエクの施術中は会話ができないので、ひたすら技術に集中することになる。そのため、会話が苦手なアシスタントは、施術中の会話に気をつかわなくて済む。そのかわり、施術が終了すればお客から感想を聞き、手入れのアドバイスも必須となる。

最小かつ必要な情報交換がアシスタントにとってこのうえない会話の練習になる。そのためスタイリストデビューが怖くなくなるというメリットもある。マツエクのお客はヘアのお客になる可能性もあるので、コミュニケーションがとれてくると、マツエクで集客したお客をヘアに、ヘアで集客したお客をマツエクにと、次回予約のメニューが広がっていく。

 

サロンのオペレーションもより効率的に、価値観も変わる!

技術売上に対してマツエク売上は、まずは2割あればベスト(ヘア10:マツエク2)。これまでのベースの売り上げに2割のマツエクの売り上げがプラスされるので、サロンのメリットも大きい。

だだし、注意したいのはリーダーの考え方で決まってしまうこと。従来の考え方から抜け出せないリーダーは「アシスタントはアシスタントの仕事をしていればいい」となってしまう。アシスタントがつかなければ自分の売り上げが下がるから、アシスタントに入客させたくないと考えるリーダーもいる。これでは2割のプラスオンは難しい。アシスタントが担当できるマツエクのお客が来店したら「自分のアシストはいいからマツエクを担当して」と言えるリーダーでないとサロンの売り上げは伸びない。実際にそういうリーダーがいるサロンでは売り上げを伸ばしている。その分、リーダーの仕事量は増えることになるが、それをカバーするためにスタイリスト同士がアシストしあうようになる。サロンにとっては、スタイリスト同士の横の連携ができるという大きな副産物がある。

これは、個人にお客がつくのではなく、サロンにお客がつくことになり、産休で休職するスタッフがいたり、スタッフの退職があった場合でも、自然にそのお客を引き継げる仕組みがつくられることになる。だから、多少のスタッフの変動があっても売り上げに影響は出ない。みんなでお客を担当し、みんなでお客を大事にするという価値観がスタッフのなかに生まれてくる。場合によっては、アスタントがマツエクの施術をするために、スタイリストがアシスタントをアシストするということもある。

マツエクにサロン全体で取り組むと、これまでスタイリスト1人にアシスタント1~2人というユニットで動いていたやり方が変わってくる。ユニットで動くことによって売り上げが頭打ちになっているとしたら、それを打開するよい機会になる。マツエクを導入することで、新たなサロンオペレーションの構築と価値観の共有が自然に出来上がる。

 

客単価、時短、店販、クオリティを総合的に追いかける

マツエクは来店周期が短い。3週間に1回は来店する。平均単価は3,000~4,500円。マツエク関連の店販がこれにプラスされる。マツエク専門店だと平均単価はこれより1,000円くらい高い。専門店または専門スタッフを置いている場合は、マツエクのメニューだけで店舗を運営しなければならないので、単価がどうしても高くなる。それに対して、平均単価が低いということは、むしろ大きな武器になる。美容室でカットからマツエクまでをワンストップで施術でき、そのうえ単価が低いのでお客にとっては大きなメリットとなるマツエクの売り上げだけでサロンを運営していくのは大変だが、美容の仕事がベースにあったうえでマツエクの売り上げがプラスオンされるので、余裕をもったサロン経営ができる。

さらに、美容室にあらかじめ備わっているシャンプー台やスペースを有効活用できるので、内装や設備に投資する必要がない。今後、製品化が予定されているシャンプー台に取り付ける器具を使えば、その日からマツエクのメニューが展開できる。

現状のスタッフにマツエクの技術を習得してもらうので、アイリストを採用する必要がなく求人費用もかからない。スタッフ1人当たり100万円の売り上げをヘアで上げるか、ヘアとマツエクで上げるか、マツエクだけで上げるか。それは美容室、美容師の個性に合わせてかまわない。マツエクメニューの存在は、多彩な集客方法と客単価アップ、美容師自身のタイムパフォーマンスの向上につながる。

 

取材協力:株式会社EYE STUDIUO(京都府京都市)、株式会社WINK(京都府京都市)

 

中村由香里[(株)EYE STUDIO、(株)WINK代表取締役]

なかむらゆかり/1977年10月28日、大阪府生まれ。NRB日本理容美容専門学校卒業。夫・中村芳進氏が代表を務める、京都府を中心に美容室NOISMなどを展開する㈱Onの設立に参加。ほどなくして同社のアイラッシュ技術開発・事業発足に尽力する。2016年2月㈱EYE STUDIOを設立、代表取締役に就任。若手美容師の早期戦力化、投資に対して十分な生産性を担保できる美容室メニューとしてのアイラッシュ理論・技術を独自に構築し、全国の大手サロンを中心に講習を請け負っている。2018年9月にESラッシュやグルーなどの商品開発・販売を行う㈱WINKを設立し、代表取締役に就任。

 

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