日々状況が変わる新型コロナウイルス問題、美容室はどう対処していくべきなのか?
正解は誰にも分らない中で、このトピックに対しての立場を共有する場を作るため、月刊BOBのインスタアカウントで4月20日からインスタライブを始めました。
第1回(4月20日)のゲスト、カンタロウさんとのライブ内容をお届けします。
カンタロウ[LIM(リム)]
かんたろう/1975年、福岡県生まれ。高校を卒業後、通信課程で美容免許を取得。新大阪のサロン1店舗を経て、1996年に有限会社LESS IS MORE (LIM) に入社。25歳より同社の人材育成や店舗ブランディングといった経営部門にも携わる。LIMディレクターに就任後、東京進出、シンガポール、ロンドン、香港、台北、上海にLIMを進出させる。現在は各都市を飛び回りながらLIM全体のプロデュースを行っている。http://www.lessismore.co.jp/
目次
海外展開をしているLIM の新型コロナ対応とは?
BOB編集部
今日のゲスト、カンタロウさんは海外展開をしているLIM で海外の責任者を務めています。現在のサロンの状況を伺えますか?
LIM は東京と大阪に店舗があり、海外には上海、香港、ロンドン、台湾、シンガポールに展開しています。日本は現在(4月20日のライブ時)、大阪は制限の中で営業、東京はクローズしています。
カンタロウ
BOB編集部
海外の状況は?
出店してすぐ休業状態だった上海店舗
少し長くなります。今年の1月に上海にサロンをオープンしたんですけれど、すでに昨年12月に新型コロナが武漢で発生していたんです。まだこんなことになるなんて誰も想像してなかったから、上海も大丈夫だろうとたかをくくっていた。距離があるしね。でも、オープンしてすぐに状況が一気に変わり始めた。
カンタロウ
BOB編集部
出店したのにすぐ休業ですか。
そう、でも都市封鎖だから仕方ない。上海のそういった状況があったから、日本も2月からマスク着用で営業してました。万が一ロックダウンがかかった場合のマニュアルもそのころにはできていましたね。中国みてヤバさを感じていたから。
カンタロウ
BOB編集部
日本の状況判断はどのように?
基本的には政府の要請に応じて判断しているので、当初は全店を5月6日まで休業と発表したんです。その後、都道府県で判断が一任されて、東京都は最終的には休業要請からは外れた(4月10日)。大阪府は「社会生活を維持する上で必要な施設継続」として要請から外れた。それでいったんインスタやHPで発表した「5月6日までの休業」を取って、当面の間休業します、に変えたんです。
カンタロウ
BOB編集部
都市による温度差はありますよね。
そう。大阪は東京に先んじて16日から営業を再開しました。スタッフもどうしたら安心して営業できるかという考えにシフトしてきた感じです。衛生管理を徹底して、お客さまもかぶらないようにしてね。
カンタロウ
BOB編集部
実際にはどのように?
衛生管理の徹底は動画にしているので、よかったらぼくのインスタページをみてください(kantaro0427)。時短にしているところは多いけど、それはそれで問題もありますよね。
カンタロウ
時短営業は過密状態をつくりやすい?!
BOB編集部
時短営業にはどのような問題が?
時短で売り上げようとすると過密な状態をつくってしまうこと。ぼくの場合、通常は予約を30分単位で取っていくんです。でも、それだと同時に4人となるから、かぶらせないようにすると1/4になる。つまり、売上も1/4。営業を長時間にして、お客さまをかぶさせないというやり方もあると思う。予約をかぶらせないというのは1つの答えだし、これから検討してもいいとは思います。
カンタロウ
BOB編集部
ほかの海外店舗はどんな対応を?
まず、シンガポール。昔サーズが蔓延した経験から、伝染病にはセンシティブになっている国なんです。2月の15日から一週間滞在していたんですけど、けど、そのときはまだ危機感がなかった感じですね。マスクもしてなかったですし。昨日(4月19日)までは営業許可を申請した上でヘアカットのみOKだったんですけど、明日から営業停止になりました。6月1日までロックダウンの延長が決まったから、それに伴ってですね。
カンタロウ
BOB編集部
感染者が減らないとそうなる可能性があるってことですね。
ロンドンはロックダウンを延長してサロンはもちろんクローズしていますが、家賃や給料などの補償が手厚いから、何とか持っています。実は娘がロンドンの大学に通っているんですが、ロックダウンがかかる直前に帰国しました。
カンタロウ
BOB編集部
よかったですね、間に合って。上海の店は?
2月の中旬から営業を再開しているんですが、すでに街は機能しています。日本もニューヨークみたいになるよって言われていたけれど、生活習慣も欧米よりは近いので、中国のプロセスのほうが参考になると思っています。
カンタロウ
BOB編集部
2カ月くらいで正常化しているのか。
ただ世界を見てみると、美容室も休業要請に取り込まれる可能性があるし、状況が変わったら緊急事態宣言が延びることだってある(政府は5月4日、6日で期限が切れる緊急事態宣言を5月31日まで延長することを決定)。
カンタロウ
BOB編集部
緊急事態宣言、延びますかね?
ロンドンも、シンガポールも延びましたし。個人的には延びると予想しています。ただ、そうなったら対応もいろいろ考えないといけない。売り上げがない中で給料を払っていくことは難しいから。これがずっと続くと、大変なことになるかなとは思います。
カンタロウ
これからの課題は失客対策
休業中の給与補償は?
現時点(4月20日)だとスタイリストは過去の6カ月間の売り上げ平均に対して金額が決まっていて、それに対して1週間休むと10%、2週間は20%を引く計算式。大阪のスタイリストは結局1週間休んだからマイナス10%で、アシスタントは3週間休んだから給料の70%。でも、アシスタントだけマイナス30%だと不公平じゃないかという意見もあって、今調整しているところです。
カンタロウ
BOB編集部
これから失客防止が一番の課題になりますね。
都心部の今閉めている店はこれからお客さまとの信頼関係が問われるよね。密な人間関係が築けていない若いスタイリストほど失客する。
カンタロウ
BOB編集部
アフターコロナの美容室はどう変わると思いますか?
派手さが少なくなって、もっと職人的な人たちが増えるかも。美容の仕事を本気でやりたい人しか生き残っていけないだろうし。副業も当たり前になっていくでしょうね。じゃないと美容師だけで食べていける人は一握りになる。そもそも、カリスマブーム時代の人たちが70代でどうなっていくか、これまでにない新しいカタチをつくろうという流れの中でのコロナだから。
カンタロウ
自立しながらワンチームをつくる
BOB編集部カンタロウさん自身の価値観の変化はありましたか?
一言でいうと、大きな変化は自分のことは自分で守れ、ですね。自立した生き方にシフトチェンジしていかないと、だめだなと。
カンタロウ
BOB編集部
具体的にはどういうこと?
スタイリストは個人事業主で、給料は従来よりは高配当。お客からしたら、スタイリストがどういう雇用形態で雇われているかは関係がないから。ワンチームになっていればブランドとして発信ができる。アシスタントは社員として学ぶことができる。これが僕が今考える理想のチーム形態。それをLIMが採用するのかは別なんだけど。
カンタロウ
BOB編集部
この後の美容の需要はどう変わる?
全体の所得が減っているから、お客さまの美容にかけるお金も減ってくる可能性はありますよね。これまでも価格破壊が起こってきたわけだけど、生活のためにさらにもっと低価格化が進み、価格競争が激化する怖さはあると思う。来店サイクルも伸びるだろうし、ヘアカラーも2カ月に1回が3カ月に1回になったり。市場自体が落ちるんじゃないかな。
カンタロウ
BOB編集部
今、日本の美容師がやるべきことは?
カンタロウ個人の意見としては、生きていくために美容室は再開するべきだと思う。美容師は国家資格を持った衛生業なのだから、徹底した衛生管理をして国民の健康を維持する役割がある。アフターコロナのこれからは、安心して、お客さまが通える場にするにはどうすべきか、そこが問われていますね。
カンタロウ
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