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新型コロナによるロックダウン下の街で営業を続けるということ~シンガポールから

 

人のいないブギスエリア。普段は若い人が集まる原宿のような場所。

東京23区ほどの国土を持つシンガポール。東京で緊急事態宣言が発表された4月7日に部分的なロックダウンが発動しました。

既にロックダウン状態に入っている他都市と違うのは、理美容業にカットメニューのみ許可されたこと。

LIMシンガポール店責任者のカワサキコウジさんに聞きつつ、シンガポール政府からの指示内容など、営業中の美容室、美容師の皆さんに役立つ情報を中心にまとめました。(4月18日取材時点の情報です)

シンガポールの「部分的なロックダウン」と美容室の営業

これまでの経緯

1月23日 シンガポール初の感染者を確認

3月15日 日本からの入国を規制3月23日 全世界からの入国を規制

4月3日 シンガポール首相が部分的なロックダウン(首相はサーキットブレーカーと呼称。ソフトロックダウンとも言われる。この記事では以降「サーキットブレーカー」と呼びます)を発表

4月7日 30日間の部分的ロックダウンが発動。

学校はすべて休校(自宅学習)。必要最低限のサービスと主要な経済部門を除いてすべての会社・施設は閉鎖。

不要な外出は禁止。「外出制限」はされていないが事実上制限されているような状態。マスク未着用者には約2万円の罰金。

人との交流、集会なども自粛がもとめられている。

CNA作成の4/7以降も営業可能なサービスリスト

上の画像の右下にあるように、「必要最低限のサービス」その他の項目に「hairdressing and barber」が含まれた。ただしサービス内容はカットのみに制限。

4月18日 感染者数の合計が約6000人に

美容室が営業する方法

サーキットブレーカー発動とともに「カットメニューのみ」「1時間以内」という指示が政府から発表され、申請して営業許可を取れたサロンが営業可能に。

カワサキさん
カワサキさん
申請許可が下りないこともありますが理由は不明です。ほとんどのお店が営業時間を短縮したりしながら営業しています。完全営業停止を予想していたので正直驚きました。営業できて安心するけれど、街へ出ることに不安もあり、複雑な感情です

政府から支持された新型コロナ対策とは

カワサキさん
カワサキさん
政府からの発表はウェブサイトで確認。WhatsApp(LINEのようなもの)でも感染者数や予防法などの情報が送られてきます。理美容室へもかなり具体的な感染予防策が支持されました。

政府からの理美容室への指示

政府からの指示をまとめた現地美容協会の資料。オレンジの印は川崎さんの書き込み

・政府に営業許可を申請し許可が下りたサロンのみ、カットメニューのみ営業OK

・カットは1時間以内とする

・ヘアカラー、パーマ、トリートメント、店頭での商品販売は禁止

・カット時、使い捨てのゴム手袋の着用、マスク着用を推奨する

・席の間隔は1メートル以上を必ず保つこと

・手指消毒用のハンドサニタイダーを置くこと

ロックダウンの街での営業

客足はどうなった?

サーキットブレーカー前は消毒などの衛生管理を徹底し、通常の2割減のイメージ

サーキットブレーカー後は8割減。

カワサキさん
カワサキさん
外出できる場所が限られ、人との交流も制限されている状況。人と向き合って会話が出来る場所は美容室くらいしかなく、お客さまにとっての気晴らしやリフレッシュできる場所になっていると感じています。売上げという面では大きく下がりますが、社会的な役割は大きいのではないかと

関わる人数を減らす勤務形態

サーキットブレーカー発動後、LIMシンガポール店では前日までの完全予約制に移行。

スタイリストは予約時間に施術の為に出勤し、終わり次第退勤というシステム。アシスタントは担当スタイリストに合わせて出勤するが、シャンプーやドライはせず、清掃や電話応対のみ。

カワサキさん
カワサキさん
お客さまの感染リスクを少しでも減らす為に、アシスタントはお客さまとほとんど関わらないようにしています

実施している感染症対策~手袋カットは難しい

先述の政府からの指示に加え、

・政府から推奨されている、マスクと使い捨て手袋の着用

・来店した方にアンケート用紙を渡し、体調、渡航歴の確認

・来店時に必ず検温

・施術後にはアルコールを使い、席を消毒

カワサキさん
カワサキさん
使い捨ての手袋を使ってのカットは、ウェットでは問題ないけれどドライの髪には引っかかりやすくて正直やりづらいです。今後見直す予定です。手袋を付けていると量感も感じられないので、非常にカットが難しいです!

顧客へのフォローアップは?

カワサキさん
カワサキさん
ホームカラーなどの相談をされることはありますが、今は1ヶ月の制限解除を信じてお客様も我慢し、理解しているように思います

カワサキさんからのメッセージ

シンガポールは元々観光客が多いこともあり、いつも街には人があふれていました。誰もいなくなり閑散とした街をみていると、不安というか恐怖というか、なんともいえない感覚になります。同じような気持ちを持った日本の美容師さんも多いのではないでしょうか。私自身も家での過ごし方を模索中で、カラーやパーマの技術が衰えないように自宅で練習、知識を習得するなど挑戦しています。世界中が大変な時期です。正解が見つけにくいこともありますが、それぞれが考え行動し、この苦境を乗り越え、終息した時の明るい未来を想像しながら頑張っていきましょう!

海外LIMの責任者であるLIM OOO(オーオーオー)のKANTAROさんからのメッセージ

日本だけに限らず、世界中が大変な局面を迎えています。それぞれの国の考え方によって、美容師の仕事に対する規制や期待も全く違うことに、改めて驚かされました。

この先、私達の仕事にも規制がかかる可能性もありますが、衛生管理を徹底し、お客さまそしてスタッフの健康と安全の為に、ヘアサロンから感染者を発生させないように気をつけましょう。この危機を乗り越えた後には、今とは全く違う価値観が発生し、日本の美容師の新しい生き方や働き方もきっと生まれてくるでしょう。今はとにかく辛抱の時期だとは思いますが、人を美しくして幸せにする立場である私たち美容師が、ネガティブになって疲弊することなく、元気で明るいポジティブの最前線であれるようにがんばりましょう!

カワサキコウジ[LIM/シンガポール]

かわさきこうじ/1988年11月25日生まれ。愛媛県出身。山野美容専門学校を卒業後、都内1店舗を経て2012年LIMシンガポール店にアシスタントとして入社。アシスタント、スタイリストそれぞれの立場からLIMの考え方を学び、半年前よりLIMシンガポールの責任者を務めている。シンガポール人の顧客の割合が多く、学生から主婦までと年齢層も幅広い。資生堂BEAUTY INNOVATOR AWARD 2015グランプリ受賞。

↓カワサキさんの作品

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