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想像するだけでおもしろいヘアスタイルの歴史 Vol.1

定番のあのヘアスタイルはどう生まれたの? へスタイルのバックグラウンドを知ることで生まれる新しい発想もきっとある。ニューヨークのFashion Weekやミラ・ジョヴォヴィッチなどのヘアカットなどニューヨークで活躍し、2018年に帰国したKatsumi Matsuoさん執筆の「ヘアスタイルの歴史」。ワールドワイドな視点から見たヘアスタイルの歴史を3回に渡り紐解きます。

 

Matsuoさん
Matsuoさん
初めまして。僕が数年前から書き溜めていたヘアスタイルの歴史を、現役美容師さんやこれから美容師を目指す人にも読んでいただけたら嬉しいです!

 

ドレッドを切らなければ没収試合!?

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で多くの業種、美容室はもちろん、私の撮影業務も影響を受けて変化を求められることになりました。その最中、アメリカを中心に黒人への人権無視に対するプロテストが大規模に行われていたことを皆さんもニュースでご覧になったかと思います。

私たちが普段仕事にしているヘアスタイルに対しても、差別の対象と感じられていた出来事がアメリカではごく最近まで行われていました。

コーンロウの学生の入学を拒否するという学校や、レスリング大会に参加した黒人の高校生がドレッドを切らなければ没収試合にすると通告を受けるなど、また、職場環境でも同じようなことが起きていたようです。

日本人の感覚でいえば、学校や職場でこのようなスタイルが好まれないのは当然のように思えますが、コーンロウやドレッド、ブレイドは、国によってはコミュニティ・年齢・配偶者の有無・富・権力・社会的地位および宗教を示している場合があります。

 

編み込みとは、アイデンティティの確立

Photographer_Tomohisa Kinoshita
Stylist_Sayuri Murakami
Hair_Katsumi Matsuo
Make-up_Chiris Arai
Model_Marianna Coldbella

 

西アフリカやスーダン、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ソマリアなどではコーンロウにすることで、年齢・宗教的信念・親族関係・結婚状況・富を示しますが、これは自己表現の一種でもあります。

 

ガーナの編み込みは、今日ではバナナブレードまたはフィッシュボーンとも呼ばれていますが、ガーナの三つ編みの最も初期の描写は、紀元前500年頃に彫られた象形文字と彫刻に現れており、アフリカ人が編み込みを大事にしていたことを示しています。

フラニ族は、西アフリカとサヘル地域に住む世界最大の遊牧民コミュニティです。ここでは世代を超えて女性に受け継がれる伝統として、家族の銀貨と琥珀を編み込みます。これは遺産のシンボルとして、また、美的目的があるそう。

 

ゴッデスブレードは、古代アフリカの時代にまでさかのぼることもできます。従来のコーンロウと形状が似ていますが、編み込みは全体的に太く、隆起しており、非常に滑らかで明確です。

 

ボックスブレードは、南アフリカでは紀元前3500年までさかのぼることができます。正方形や三角のセクションを取り、かつてはウール、フェルト、貝殻、宝石やビーズと一緒に編みこんでいました。90年代にジャネット・ジャクソンによって人気になりこの名前が名付けられました。

▲ボックスブレード  (c)TopFoto/amanaimages

これらはアートワーク、創造性、正確さ、そしてスタイルの新しい次元の象徴であり、現代においても黒人の人々にとっては編み込みスタイルはアイデンティティのひとつと言えます。

 

地毛に敬意を!

2019年7月3日、カリフォルニアのガビン・ニューサム知事が署名したことを皮切りに他の州にも広がり始めたのが「クラウン法」です。クラウン法の正式な呼び名は『Creating a Respectful and Open World for Natural Hair』。

地毛に対して敬意を持ち、開かれた世界をつくる法であり、

「人種や民族性による差別は禁止する」

「人種とはその人の髪型を含む人種的な特徴である」

「そしてその髪型とはブレイズ、ドレッド、ツイストを含む」

といった内容で、髪型による人種差別の撤廃を目指す法案でした。

 

髪と法律という一見無関係のように思えますが、なぜそれが起きたか? その理由や関係性を考えると、つくるヘアデザインの幅も広がります。

変化の激しい今だからこそ、ヘアスタイルについても歴史をから学び、未来を想像するのもおもしろいかもしれません。

 

テキスト:松尾克己

 

Profile

松尾克己/1978年生まれ、福岡県出身。1998年、山野美容専門学校卒業。都内サロン勤務後、2006年ニューヨークへ渡米。2009年、Interview Magazineにてヘアスタイリスト・デビュー後、Art Department所属。New York Fashion Weekでは、キー・ヘアスタイリストを務め、Met GalaやTony Awardsなど、レッドカーペットでのセレブリティのヘアスタイリングを多数手がける。アメリカを拠点に雑誌Vogue, Elle, Harpers Bazaarや広告等を中心に活動。またヘアートレンド・アドバイザーとして、大手企業へヘアープロダクトやオーガニック製品事情を提供。2018年現在、日本に帰国。

Portfolio:http://beautydirection.net/artistlist/katsumi-matsuo/

Instagram : https://www.instagram.com/katsumimatsuo/

 

 

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