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女性美容師の働き方を考える VOL.1 

女性美容師の働き方を考える【VOL.1】 GIEN(大阪府大阪市) マネージャー 湯川小百合さん

細やかな気配りや感性豊かなヘアデザインは女性美容師ならではの魅力。日本の高齢化によりさらに増えるミセス世代のニーズを考えても、共感力の高い女性美容師が活躍できる優位性は変わらないでしょう。

しかし、女性にはライフスタイルの変化という大きな壁があります。
仕事を頑張りたいと思う一方で、プライベートとの両立を考えると将来に不安を感じている女性美容師も多いのではないでしょうか?

シリーズ第1回に登場するのは、関西で美容学生から圧倒的な人気を誇るGIENを創業時から支える湯川小百合マネージャー。出産後の時短勤務のコツを伺いました。

 

実は一度GIENを退社していた!?

――湯川さんがGIENに入社してするまでの経緯を教えていただけますか?

 GIENは2009年に創業したのですが、井上(光治社長)とは心斎橋のサロンで一緒に働いていたことがあって、同期のような感覚でずっと連絡は取り合っていたんです。

 私は体を壊したのがきっかけで地元・岸和田のサロンでしばらく働いていたのですが、結婚したこともあり一度は美容師から離れていたんです。そんなタイミングで井上が独立するというので、お店が軌道に乗るまでという気持ちで合流しました。

 ただオープンして少し経ったころに離婚することになったんです。当時30歳だったので、女1人で生きていく可能性もあるなと思い、本腰を入れるようになりました。

 

――創業時は何名でのスタートだったんですか?

 井上、私、新卒社員を入れて3名でのスタートでしたね。お客さまは井上の顧客だけだったので、メインアシスタントとして入っていました。ただ、ありがたいことに集客サイト経由でどんどん新規が入ってくるので、徐々に指名売上が上がっていき、1年半で200万円まで売り上げるようになりました。

 それからさらにスタッフが増え、2011年には2店舗目を出店しました。創業店舗は女性専門サロンとしてリブランディングし、営業自体は順調だったのですが、私が再婚、出産することになり、実は一度退社しているんです。

 

――産休ではなく退社ですか?

 夫の実家が兵庫の美容室だったので。ただ、兵庫に行ってから出産後の大変さもありましたが、同じ美容室でもGIENの楽しさが忘れられず、お姑さんとの折り合いもあり、夫に「大阪に戻りたい!」って懇願したんです。

 「大阪に戻って来るんだったら」と井上から声はかけてもらったのですが、私も後輩に色々と任せてきたので「今さら戻るのはちょっと……」と思っていました。ただ、その後輩たちに「ぜひ戻ってきてください」と言われ、1人目を出産して10カ月目の時にGIENに復帰させてもらいました。

 

たとえ制度が整っていても無理なものは無理

――復帰後はどのような働き方をしていたのですか?

 子供は保育園に預けられましたが、今までのようにフルで働くのが難しいのでみんなのサポートが中心ですね。

 実は退職する前に後輩にお客さまを引き継いでいたのですが、そのお客さまが残っていてくれたのはうれしかったですね。女性専門サロンだったので、個人というよりお店にお客さまがついていたのが大きかったです。だから私はみんなのサポートをしつつ、少しずつ新規を担当させてもらってました。

 

――出産祝い金50万円、保育園手当月3万円までという手厚い待遇は誰が決めたのですか?

 これはもう井上の考えですね。出産祝い金は私の一件があって以降に決まったのですが、結婚手当、保育園手当はいただきました。私の場合は復帰時に収入がなかったため保育園代が高くなく、ちょうど手当の3万円で収まりましたね。

 

――お子さんは2人いらっしゃると聞きました。

 それから2年後に2人目を出産したのですが、その時は1カ月前まで働いて、産後2カ月で復帰しました。体調が良かったのもありますが、この位でも復帰できるというのを示してみたかったんです。でも、こればっかりは人によって体調や環境が異なりますし、本人の希望もあるので、復帰の仕方は人それぞれですね。

 だからうちでは時短勤務といっても何時から何時と決まっているわけではなく、1人ひとり個別に相談しながら決めていく感じにしています。たとえ制度が良かったとしても無理なものは無理なので。

 私自身、子供を産んでからよくわかったんですけど、自分の頑張りではどうにもできないことってありますよね。そこをどうにかしようと考えるよりもその人ができる働き方を聞いて、それに応える形の方がいいじゃないですか?

 また、うちは給与を歩合計算か自動昇給(上限30万円)のどちらかを選べるようになっているので、「売り上げを追うことも追わないこともできる」。その点では働き方を選びやすいのかなと思います。

 

――個別に相談というのはどのように行なっているんですか?

 面談とかかしこまった感じではなく、ランチを食べながら女子トークの延長でとか、サロンの空き時間に声をかけて雑談の流れで聞くようにしています。

 今は京橋と梅田の2店舗で勤務しているので、その時に周辺の店舗も回るようにしています。最近はお悩み相談役として認識されているので、店長自ら「○○さんの話を聞いてあげてください」とか報告してくれるようになりましたね。だからもう御用聞きみたいな感じです(笑)。

 

しんがりでお尻を叩いていくのが私の役割

――井上社長と湯川さんの役割分担はどのような感じなのですか?

 井上が強いリーダーシップを発揮してくれるので、必然的に私がしんがりの役割ですね。私ももともとは勝気なところがあったのですが、井上と一緒に仕事するにつれ、自分がしんがりでフォローしていく方が向いているのかなと。女性ならではの協調性、共感力、コミュニケーション力を生かした方が心地良くて、こっちが本来の私だったんだなと気付かされました。

 

――時短勤務とフルタイム勤務の温度差は生まれたりしませんか?

 友人の美容師からもよく聞きますが、やはり時短勤務とフルタイム勤務のいがみ合いというのは生まれがちですよね。「忙しいのに帰っちゃってさ」なんて。時短だから楽しているように見えないように気は使っていますが、私が最初に時短勤務になってサロン風土を作っていけたのが良かったと思います。

 今も朝9時からのレッスンは必ず出るようにして、その代わりフルタイムはレッスンに出なくてOKにしたり。そうすることでバランスを保っていますね。

 

――現在、ママ美容師は何名いるんですか?

 育休中のスタッフ含めると4名です。今は創業時のメンバーが多いですが、みんな年齢が上がってきたのでこれからは毎年出てくると思います。

 

――ママ美容師だけ勤務店を分けるサロンもありますよね?

 店舗が増えて、もっと人数が増えてきたらそういう風になるかもしれませんが、私は時短勤務を自然に受け入れているこの風土がずっと続くといいなと思っています。最近では子供がいる男性もシフト調整してますし、これからは女性だから男性だからという時代ではないですよね。

 

キャラを変える勢いでとにかく声をかける

――GIENは20代前半のスタッフが特に多いですが、共感は得られるものですか?

 ママ美容師って店を出てから方が実際はお店出てからの方が忙しいじゃないですか。でもそれは若いスタッフにはわからないし、わかってというのも無理だし、そこはお互いの気の使い合いですね。

 彼女たちも今後通るであろう道だと思うんですが、結婚もまだこれからって年齢だと「将来私もこうなるかもしれない」とは現時点では思えないんですよ。今は今でしんどいから。

 だからこっちから「ありがとう」って感謝の気持ちを積極的に伝えていかないとダメですね。こういうことって男性より女性の方がシビアだったりしますね。

 

――若いスタッフと距離を縮めるコツはありますか?

 これはもうコミュニケーションの量を増やすしかないですね。以前は毎日スタッフと飲み歩いていたからわかるんですけど、飲みに行くと一回でグッと距離が縮まるじゃないですか。「明日もがんばろうぜ!」って(笑)。

 でも今はお酒の力を借りることなんてできないので、もうキャラを変える勢いでとにかく「何でも話してな」と積極的に声をかけて話しやすい空気をつくっています。

 やはり20代前半からすると40歳のベテランって普通に話しにくいじゃないですか? でも、一番年長の私がこういうスタンスだったら、誰も変な上下関係を作れないし、上司が壁をつくらない会社でありたいというスタンスは井上とも一致していますね。

 

――貴重なお話ありがとうございました! 最後に湯川さんの今後の目標を教えてもらえますか?

 実は将来は海外に出店して、子供と一緒に生活しながら働きたいんです。人生一度きりじゃないですか? これは井上にも言うのですが、仕事に対してのワクワク感をみんなに持って欲しいなら、私自身が楽しんでないといけないと思うんです。

 だから同じことを繰り返すのではなく、「新しいことをやりたいよね」っていつも井上と話してます。そういう意味で井上は色んなアイデアを思いつく人なので、「それめっちゃ面白そうやん!」って(笑)。こうして振り返ってみると大阪に戻って、GIENに復帰させてもらって本当に良かったなと思っています。

 

ゆかわさゆり/1980年5月16日、大阪府岸和田市生まれ。グラムール美容専門学校卒業後、大阪府内で数店舗勤務を経て、2009年、旧知の井上光治社長が立ち上げたGIENに合流。現在は執行役員・マネージャーとして8割を占める女性スタッフの心の支えとなっている。

 

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