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パートナーサロン全国80サロン以上! 美容師の可能性を広げる医療用ウイッグ

あなたが美容師を志したきっかけは何ですか? 自分が目指す美容師像について深く考えたことはありますか?

※この記事は、髪書房WEBZINEにて2016年2月に取材・掲載したものです。

愛知県日進市には、週5回のサロンワークを行いながら、NPO活動に勤しむ1人の男性美容師がいる。その名は赤木勝幸さん(現在47歳)。彼は15歳のときに体験した国際NGOのカットボランティアがきっかけとなり、27歳でサロン独立するタイミングで地域の老人ホームへの訪問理美容を開始。それから数年経った2007年、NPO全国福祉理美容師養成協会(以下ふくりび)を設立する。今や訪問美容・障がいのある方の支援・医療用ウイッグ・途上国での職業訓練と多岐にわたる活動を行っているふくりびだが、赤木さんが訪問理美容を開始した21年前は少子高齢化社会に目を向ける人は少なく、赤木さんの活動はなかなか受け入れてもらうことができなかったという。しかし「誰もがその人らしく美しく過ごせる社会の実現」の信念を貫き通し、アクションを起こし続けることで、今や理美容・医療・介護・ファッションなどの各プロフェッショナルが力を合わせるNPO団体として注目されるまでになった。そこで今回は、ふくりびの活動の1つである医療用ウイッグに着目する。

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ふくりびが医療用ウイッグの活動をスタートさせたのは今から6年前。その当時は医療用ウイッグの認知度は低く、販売しているのも大手と呼ばれる会社がほとんどだった。高額な金額設定、デザイン性の低さ、品質のばらつき、そして人目につかないように隠れて購入するユーザーの心理的な圧迫。問題は数多く存在した。そんな現状に疑問、憤りを感じたふくりびは「闘病中でもキレイでいたい」そんな女性を後押しするために何かできることがあるのではないかと医療用ウイッグの活動をスタートさせる。そしてたどり着いたのが、ナチュラルな仕上がりを目指したヘアカラーもパーマも施術可能な高品質の人毛100%の医療用ウイッグ。そして利用者に嬉しい美容室セミオーダーのシステムだ。1人ひとりの似合わせ、その人が求める美しさにこだわるからこそ行き着いたのが、美容師のチカラだった。

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そんな医療用ウイッグの制作プロセスは至って普通。施術を行う場所は、美容室へ足を運んでもらう場合と病院で行う場合の2パターン。病院で施術を行う場合は、病院との調整など、院内ではさまざまなルールがあるため難しいこともある。病院からの信頼を得るためにも丁寧なやりとりと連携が重要である。しかし、お客と向き合う根本的なスタンスはほとんど変わらない。カウンセリングからスタートし、施術、そしてアフターカウンセリングの流れで進める。
「担当美容師には、カウンセリングにおいて親切に分かりやすく説明してもらうようにお願いしています。髪の悩みに親身に寄り添って、一緒にヘアデザインを決めていくイメージです。普通のお客さまの対応とほとんど変わりはありませんよ(ふくりび事務局長:岩岡さん)」
それは施術も同じ。カウンセリングとカットを含めて施術時間は約1時間。ウイッグを被せ、通常通りにカットする。異なる点としては、ヘムラインに産毛をつくり、より自然な仕上がりを目指すこと。抗がん剤治療の副作用として髪の毛が抜けてしまう方は、抜ける前に来店することが多いため、地毛をカットした上でウイッグの似合わせを考える。そして、アフターカウンセリングではウイッグのメンテナンスや頭皮ケア、そして生えてくる地毛への対応についてアドバイスを行う。髪が生えてくるまでのイメージ提案も重要だ。医療用ウイッグに適した技術を身につけることはもちろん、お客様の身体の状態について理解を深めることも大切なことであると言える。 「ほとんどの方は髪が抜ける前に医療用ウイッグをつくりに来られます。そのため『美容室に個室がないからできない……』と悩んでいる美容師さんでも決して不安になることはありません。営業前や営業後に対応することも可能ですからね(ふくりび事務局長:岩岡さん)」
国内では、山形県市川市や佐賀県伊万里市、岩手県北上市、秋田県能代市など、がん患者の医療用ウイッグ購入費用の一部を補助(1~3万円が主流)する自治体も増えてきている。業者の利権や既得権の話ではなく、医療用ウイッグを必要とする人々にとって適した助成を受けられるよう、行政への働きかけもふくりびは行っていく予定だ。国外を見渡せば、ベルギーもそういった取り組みをスタートしている。徐々に広まり始める医療用ウイッグ。しかし、定義のない医療用ウイッグを世の中に浸透し、多くの人が理解を深め、誰でも美しくなることを楽しめるようにするためにはもっと多くの美容師のチカラが必要だろう。
「医療用ウイッグが当たり前のサポートになってほしい。当たり前に話題に出て、当たり前に相談できる世の中にしたいですね。今は「がんとともに生きる」社会において、闘病しながら働いている方も増えており、外見の変化へのサポートは重要です。そのため、医療機関からの美容師に対する期待度は非常に高まってきていますね(ふくりび理事長:赤木さん)」

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ふくりびでは、理事長の赤木さんと事務局長の岩岡さんを中心に医療用ウイッグの理解を深めるセミナーを各都市で行っている。

あなたは何で美容師になったのか。カッコイイから、華やかだから、クリエイティブな仕事がしたいから。10年前に起こった美容師ブームに比べ、今の若者は人のために役に立ちたいという理由で美容師を志望する傾向が多く見受けられるという。この事実は、ふくりびのような活動が震源地となり、美容師のチカラの可能性がクモの巣のように徐々に広がってきている結果なのではないだろうか。

 

NPO法人 全国福祉理美容師養成協会
理事長:赤木勝幸さん、事務局長:岩岡ひとみさん
(愛知県日進市香久山1-2809、http://www.fukuribi.jp/

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